変化に対応する 商社繊維事業 ~3月期決算から~(2)
2024年06月04日 (火曜日)
利益追求の施策が奏功
アパレル堅調で増収増益 伊藤忠商事
伊藤忠商事繊維カンパニーの2024年3月期連結決算は、収益が5351億円(前期比1・0%増)、売上総利益が1280億円(9・9%増)、営業利益が250億円(25・6%増)、純利益が270億円(6・0%増)の増収増益だった。
新型コロナウイルス禍の影響の軽減に伴い、アパレル関連事業の業績が堅調に推移した。前の期から一過性利益の反動があったものの増益となった。
主要関係会社の連結取り込みの純利益を見ると、デサントが53億円で前の期から12億円も増加した。三景は1億円増の12億円だった。一方、ジョイックスコーポレーションは3億円減の8億円、ドームも1億円減の4億円となった。エドウインは前年並みの6億円。
今期(25年3月期)は、スポーツ分野を中心としたアパレル関連事業の伸長に加え、資産入れ替えに伴う一過性利益などにより、純利益330億円を見込む。
付加価値化進み大幅増 蝶理
蝶理の24年3月期繊維事業の連結決算は、売上高が1459億円(前期比0・7%増)、売上総利益が213億円(16・5%増)、営業利益が80億円(46・6%増)、経常利益が78億円(53・3%増)だった。
糸、生地、製品のいずれも増収増益。蝶理本体や子会社のSTXで利益率の低い商いを減らし、環境配慮商材など差別化品比率の向上に努めたことなどが大幅増益に寄与した。
単体の売上高は846億円で、前期比5・3%増。単体よりも連結の増収率が低いのは、STXで事業構造改革の一環として約40億円の不採算取引の撤退を進めたことなどによるもの。
今期は繊維事業で売上高1550億円(6・2%増)、税金等調整前当期純利益68億円(15・0%減)を見込む。減益予想の理由は、将来の成長に向けて基盤作りに注力、堅実に見込むため。
衣料繊維、産資とも良好 帝人フロンティア
帝人フロンティアの24年3月期業績(帝人繊維・製品セグメントの連結業績、前期比は前年度時点の組織の数字との比較で算出)は売上高3214億円(前期比0・1%減)、営業利益121億円(21・0%増)で減収ながら増益を達成した。衣料繊維と産業資材がともに順調に推移し、利益を押し上げた。
衣料繊維は、北米や中国向けの生地・衣料品販売が堅調で、国内向け衣料品も販売好調が続いた。産業資材は、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維、人工皮革、インフラ補強材の販売が好調を維持し、自動車関連の海外事業も一部用途を除き好調だった。
今期は、外部環境に左右されない基礎収益力の確立を図る。衣料繊維は量から質への転換と環境配慮型の機能素材の充実に重点。産業資材は、モビリティー、環境・インフラ領域での製造基盤強化と拡販に取り組む。