日本繊維機械学会 再生糸の総合研究進む
2024年06月04日 (火曜日)
日本繊維機械学会のグループが反毛を使った再生糸(リサイクル糸)・生地・製品に関する総合研究を進めている。昨年に続き、今年5月の年次大会でも新たな研究結果を発表した。再生糸の普及のための基礎研究として注目される。
世界的に環境配慮型繊維への要求が高まり、リサイクル原料を使用した糸・生地・製品への注目が高まる一方、リサイクル素材の物性などに対する総合的な品質評価基準などは標準化されていない。こうした中、同学会は昨年再生糸普及委員会を立ち上げ、既存の繊維リサイクル技術研究会とも連携しながら再生糸の普及を目指している。
その一環として取り組むのが、京都工芸繊維大学の木村照夫名誉教授、神戸大学の井上真理教授、滋賀県立大学の森下あおい教授、カラーループ(京都市)の内丸もと子社長、兵庫県立工業技術センターの東山幸央上席研究員、ボーケン品質評価機構の小出真也氏らのグループによる反毛を使った再生糸の総合研究「廃棄衣料由来の再生糸の開発と普及」だ。
昨年の年次大会で反毛による色糸製造方法や糸の物性、織物の物性や風合いなどを分析したパート1からパート5までの研究成果を発表したのに続き、パート6「再生糸に含まれる繊維素材成分調査と品質表示について」、パート7「再生糸の洗濯性評価」、パート8「再生糸の化学的安全性について」、パート9「再生糸から成る織物の特性と風合い評価」、パート10「再生糸から成る靴下の施策と物性評価」、パート11「作り手から見た再生糸の可能性」、パート12「再生糸の最近の動向と将来性」を発表した。
今回の研究によって、再生糸を対象とした混率試験と表示方法の可能性、織物の寸法安定性、化学的安全性、織物と靴下にした際の物性と風合いについて多くの知見を得た。
テキスタイルデザイナーと製品デザイナーを対象にインタビュー調査も実施し、再生糸を使った生地に対して視覚と触覚のイメージに差異があるといったユニークなデータを得ている。