特集 スクールユニフォーム(8)/アパレル/安定供給、利益確保を重視/トンボ/明石スクールユニフォームカンパニー/菅公学生服/瀧本/オゴー産業

2024年05月31日 (金曜日)

 今春の入学商戦でも性的少数者(LGBTQ)への配慮から、ブレザーへのモデルチェンジ(MC)数が高水準で推移した。昨春は業界内で生産や納品が逼迫(ひっぱく)したが、その経験を生かし今春は比較的安定的な納品につなげたメーカーが多かったようだ。来春に向けても引き続き安定納品が求められるほか、さまざまなコスト上昇が続く中、制服の価格改定など利益確保に向けた取り組みも急務となる。

〈今春は生産、納品とも順調/デジタル化進め効率高める/トンボ〉

 トンボはLGBTQへの配慮から増える、ブレザー制服などへのMCに対応し、今入学商戦でも新規MC校からの受注が堅調だった。昨春は業界全体で制服の納品が逼迫したが、新規注文のタイミングを早めてもらうなどの策を講じたことで、今春は生産、納品ともに比較的順調に行うことができた。

 来春に向けても新規校からの受注獲得に注力する。一方で、原料価格などさまざまなコストの上昇によって利益が圧迫される状況が続いている。既存校に対しては来春の新入生からの価格改定を依頼するなど、製品の値上げを進めながら利益率の改善に努める。

 昨年に完成した物流拠点、東京物流センター(茨城県笠間市)は、順調に稼働がスタートした。藤原竜也社長は「初年度は予定する最終扱い量の6割ほどのスタートとなったが、これを来年には予定数量にまで増やす」と話す。

 デジタル技術で企業を変革するDX化も推進する。昨年から、小売店が同社にオーダーできるシステム「リテーラーオーダーシステム」を稼働しており、「ファクスや電話注文が減り、従業員の業務が円滑になった」。

 7月にはグループ会社の瀧本(大阪府東大阪市)とのシステム統合も計画するほか、27年の稼働を目指して基幹システムのクラウド化にも取り組む。

〈高精度の計画生産/今期は価格改定進める/明石スクールユニフォームカンパニー〉

 明石スクールユニフォームカンパニーは中学校を中心に増えるブレザーへのMCに対応し、受注を順調に獲得した。昨年に引き続き、今春も安定した生産によってスムーズな納品につなげることができた。

 柴田快三専務は「受注予測を立て、生産プロジェクトを組んで計画生産をしっかりと進めることができたことが奏功した」と説明する。昨春の入学商戦で安定納品が行えたことによって、備蓄生産の立ち上がりがスムーズだったことも寄与した。

 スクールスポーツ分野では「デサント」がけん引し、採用校数を伸ばす。来春に向けては、昨年発表した新ブランド「フィールディー」を訴求。同ブランドは「全国各地で成約が決まってきた」と言う。

 同社は今期(2024年12月期)の重点施策に価格改定を挙げる。製造コストなどさまざまなコストが上がっており、利益率が悪化している。柴田専務は「価格改定は先延ばしにできない」と強調し、「正しい利益を確保できる体制にするためにも、しっかりとお願いしていく」と話す。併せて、コストダウンに向けた取り組みにも力を入れる。

 来春に向け、「生産計画の精度を上げていく」ことで引き続き確実な納品につなげる。また、昨年に続いて新規注文の締め切りを前倒すなど早めの対応も強化する。

〈来春以降も早期対応/制服循環への動き強める/菅公学生服〉

 菅公学生服は今入学商戦で、LGBTQへ配慮する動きから活発になっている中学校を中心としたブレザー化に対応し、MC校からの受注を順調に獲得した。

 昨春はMC校の急増によって納品が逼迫する状況となった。しかし、今春の入学商戦では「早めの情報収集を持ってMCを仕掛けた」(黒田健介専務)など、早期対応が奏功し、安定的に生産、納品ができた。来春以降も素材の早期発注など、早めの対応によって安定生産・納品に注力する。

 今後は価格の引き上げが課題の一つとなる。原燃料価格などあらゆるコストが上昇基調にある中、黒田専務は「一つずつ丁寧に価格改定をお願いしていくしかない」と話す。

 設備投資面では、シャツ生産を主力とする米子工場(鳥取県米子市)の隣接地へブレザーやスラックスを生産する新工場を建設している。本格稼働は「来年の秋以降になる」予定だ。

 同社は制服循環に向けた動きも強めている。JEPLAN(ジェプラン、旧日本環境設計)と協働し、不要制服や体操服を回収し循環させるプロジェクトを昨年始動させた。既に中学、高校で導入実績がある。黒田専務は「回収するのが目的ではない」とした上で、「教育的な意味を持たせて、子供たちに理解してもらえるような取り組みにしていければ」と説明する。

〈統一制服のマスターメーカー狙う/サステ、フェーズフリーで/瀧本〉

 瀧本(大阪府東大阪市)は、制服MCで市町村など自治体の統一制服・標準服の獲得に力を入れている。これまで参加していなかったが、コンペに積極的に参加し「マスターメーカーも狙う」。統一制服・標準服の導入では、そのデザインの決定や仕様書の作成、導入後の運用などを支援するマスターメーカーを自治体が選定する形となる。来年、マスターメーカーとして福岡県柳川市や熊本市の中学校へ制服を供給することが決まった。

 さらに学校の関心の高いサステイナビリティーやフェーズフリー(平常時だけでなく災害時にも使える)といったラインアップを拡充し商品の柱に育てる。サステでは無水染色技術「クリーンダイ」によるポロシャツを提案。学生服メーカーとして初めてフェーズフリー協会から「フェーズフリーアクションパートナー」に認定されており、スポーツの「ヒュンメル」3型で認証を取得した。今後、統一制服やカバンなどフェーズフリー商品として充実させ、制服MCの獲得につなげる。

 これまでの「学校獲得」「店頭拡販」の両プロジェクトを、「制服拡販」「スポーツ拡販」プロジェクトに改め、制服、スポーツそれぞれで情報や課題点など収集し戦略的な販路の開拓に取り組む。特にスポーツは別注対応が多かったが、ヒュンメルでは定番商品として4型に絞り、これまであまり接点のなかったスポーツ店を通じた学校への供給なども試みる。

〈〝子供の安心・安全〟訴求/納入後のサポート体制も/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は今春の入学商戦でも安定生産によって遅れなく納品ができた。片山一昌取締役は「生産部、商品部ともにシビアに対応できている」と話す。

 一方、中学校を中心にブレザーへのMCが増える中、主力の詰め襟といった定番制服が減少傾向にあり、「今春の入学商戦は厳しかった」と説明する。

 環境は厳しさを増しているが、子供の危険回避能力の向上と地域の安全な環境づくりにつなげる「全国地域安全マップコンテスト」など、“子供の安心・安全”をテーマとする「当社の考えやモノ作りに賛同した学校が評価してくれている」。今後も引き続きその強みを生かし、受注獲得につなげる。

 同社では“スクールプロデューサー”という形で、社員が学校で制服の着こなしなどをアドバイスするセミナーも長年開いている。制服を売って終わりではなく、学校をサポートする取り組みによって関係性を強化する。

 昨年は東京都内で4年ぶりとなる展示商談会を開いた。「開催の効果があった」として、継続して開く計画を立てる。

 また、定番制服が減っていくのを見越し、ブレザー制服においても「地域定番、準定番のような制服の展開も進めていく」。まとまった受注数量を確保することでスケールメリットを出すなど、「利益の出せる構造も作る」とする。