特集 スクールユニフォーム(5)/探訪 学生服の現場から/文武両道目指す教育環境/日本体育大学荏原高等学校

2024年05月31日 (金曜日)

 多様な進路選択に対応したコース制やカリキュラムの整備、最先端のICT教育など充実した学びの環境と、全国レベルで活躍するスポーツ部を擁する日本体育大学荏原(えばら)高等学校(東京都大田区)。創立120周年を迎えた今年、制服のリニューアルを実施した。

〈最先端ICTにも注力〉

 「求めて学び、耐えて鍛え、学びて之を活かす」を教育理念に掲げ、文武両道の教育活動を実践する。学習面では生徒自身の希望進路に合わせ、難関大学に挑むアカデミック、大学・専門学校進学向けのアドバンスト、競技者や指導者としての資質を鍛えるスポーツの3コースを設置。3年間通してそれぞれの進路に応じた指導を行っている。

 学習支援では、学習塾と連携したESC(荏原スタディセンター)を設置。マンツーマンで定期テストや一般入試対策の授業を展開。希望する生徒が学びの最適化を図れる体制を整えている。

 ICT教育にも注力している。全生徒が1人1台ICT端末を持ち、授業や宿題といった学習面、ホームルーム活動、家庭連絡などのコミュニケーション、校務支援などに活用している。日本教育工学協会の学校情報認定委員会審査においては、私立学校としては初めて「学校情報化先進校」に認定された実績も持つ。

 運動系を中心に部活動も盛んだ。最近では、器械体操、柔道、スキー、ボウリング、ライフセービング部で活躍する部員が日本一を記録するなどの活躍を見せている。

〈120周年に向け制服更新〉

 同校の女子生徒の割合は現在25%ほど。男子校として創立し、男女共学に移行したのは1998年だった。そのため、女子生徒の比率を高めることが同校の長年の課題にもなっている。

 そのような中、2022年に制服のリニューアル案が浮上する。共学化に合わせて導入したブレザー制服は、10年と15年のリニューアルを経て、3代目制服が既に7年経っていたことに加え、2年後には創立120周年を控えていたことも後押しとなった。

 同年3月には早速、教職員9人で構成する「制服検討委員会」を設置。花本隆副校長が事務局長を務め、プロジェクトとしてスタートした。立ち上げ後は、委員が制服メーカー各社のショールームを訪問するなどして積極的に情報収集を実施した。品質の優劣やトレンドをつかみ、同校独自のコンセプトを策定・提示し同年10月にメーカー4社が参加したプレゼンテーションが開催された。コンセプトは、①同校のイメージを表す制服②(当時の)現行制服のマイナーチェンジをベースとしたもの③メーカー独自の新制服――の3点を伝え、それぞれに沿った制服提案を依頼した。

 プレゼンテーションの結果は、委員9人によるアンケートを元に評価。上位2社に絞った後、さらに全教職員や生徒会、生徒に新制服候補のサンプルを披露した。その反応などを加味しながら、翌11月に東京菅公学生服が提案した制服案の採用を正式決定した。

 採用した新制服案について花本副校長は「学校のイメージや、スポーティーで品格のあるデザインという期待していた点がきちんと盛り込まれていた」と振り返る。

〈随所に日体ブルー〉

 採用決定後、翌年度の学校案内パンフレット用に撮影が間に合うよう、半年ほどかけてメーカーとともに制服の細部の調整を重ねていった。主なアイテムは、ブレザー、Vネックセーター、ボタンダウンシャツ、スカート、スラックス、ネクタイ、リボンとし、LGBTQ(性的少数者)対応のスラックスもそろえた。

 女子生徒比率の向上という目的のため、「構想段階から女性教員の意見を参考にするなど、女性目線のデザインを意識してきた」と花本副校長。ブレザーは従来の紺ブレ三つボタンからグレーの二つボタンに変更して大幅なイメージチェンジを行った。生地はストレッチ性も高めて、ウオッシャブル対応とし、胸元にはワンポイントとなるエンブレムを付けた。

 日体大のテーマカラーである“日体ブルー”をネクタイやスカートのラインに取り入れている点も特徴だ。夏服用のポロシャツも日体ブルーとし、透け防止やUVカット加工、吸汗速乾機能を施した。

 今年4月、新制服に身を包んだ新入生たちが門をくぐった。2年にわたるリニューアルプロジェクトを終えた花本副校長は「1年生が着用している制服を見て、来年本校を志望したいという生徒が増えてくれることに期待したい」と語った。