特集 スクールユニフォーム(2)/求められる生産・納品対応

2024年05月31日 (金曜日)

 主に中学校で増えるモデルチェンジ(MC)への対応に追われ、昨春は大手学生服メーカーを中心に生産や納品が逼迫(ひっぱく)する状況が続いた。MC校数が過去最多を記録した昨春に引き続き、今春もMC校数が高水準で推移したものの、各社は昨年の経験を生かし比較的安定的な生産、納品ができたようだ。来春以降も中学校を中心としたMC増の傾向は続くとみられ、引き続きスムーズな生産、納品が求められる。

〈今春は生産、納品とも安定/早期準備が奏功〉

 ニッケの調査によると、2024年度のMC校数は713校。過去最多となった前年度の748校に次ぐ数字となり、トンボ、菅公学生服、明石スクールユニフォームカンパニーの大手3社をはじめ、学生服メーカーは今春も旺盛な受注に対応した。

 MC増を受け、昨春は生産面で非常にタイトな状況が続き、一部で納品遅れも発生したが、今春は各社が安定生産に注力したことで、比較的安定した納品につながったようだ。

 菅公学生服は今春、「順調に商品を納品することを至上命題」(尾﨑茂社長)に掲げ、備蓄生産などをしっかりと行いながら確実に納品を進めた。明石スクールユニフォームカンパニーは昨年に続き、今年の入学商戦でも「大きな混乱なく納入できた」(河合秀文社長)。

 今年の入学商戦に向け、大手を中心に早期対応が取られた。その一つが、安定生産を優先するために新規注文の締め切りを早めたことだ。トンボも「新規注文のタイミングを早めたことで、順調に生産ができた」(藤原竜也社長)とする。これらの対応は今年度のMC校数が前年度に比べて若干減少した要因の一つとみられる。

 新型コロナウイルス禍で国内の縫製キャパシティーが逼迫する中で、各社は海外生産の活用を広げて対応してきた。昨年はコロナ禍が収束したことに加え、キャパ逼迫の要因の一つにもなっていた、縫製工場において主要な働き手でもある外国人技能実習生が戻ってきたことは、安定生産の一助となった。

 出入国在留管理庁が今年3月に発表した資料によると、23年末における技能実習生は前年に比べて7万9616人増え、40万4556人となった。人数はコロナ禍前である19年末の41万972人に近づきつつある。

 一方、スムーズな納品につなげるため各社は生産量を増やしており、これが在庫を増やす要因にもなっている。

〈生産難易度高まる/性差解消の流れで〉

 ブレザー制服の増加によって、生産の難易度が高まっていることに変わりはない。

 ブレザー制服ではボトムスに柄物のスラックスやスカートを合わせるケースが多い。生産においては裁断や柄合わせなど、無地物だった従来の詰め襟制服などに比べて手間がかかる。

 さらに、地域や学校ごとにデザインが変わるケースも多いため、多品種・小ロット化が加速している。こちらは素材メーカー側においても生産効率を低下させる要因になっている。

 一部の自治体では従来の詰め襟、セーラー服を残しながらブレザーを導入する“第3の制服”を選択させる地域もある。近年は性的少数者(LGBTQ)への配慮から、女子用スラックスといったアイテムも増えるなど、製品の多様化も進んできた。

 各社は来春に向けても素材メーカーへの早期発注や新規注文の前倒しなど、早めの対応を取ることでスムーズな生産、納品につなげる。

 MCにおいては、学校別ではなく自治体単位で制服を更新する、“地域共通型”の動きが全国的に広がっている。現在MCが旺盛な中学校は、これまでMCの中心となっていた高校に比べて1校当たりの生徒数が少ない。メーカー側からすると、人数の少ない学校のMCに1校ずつ対応するのは困難を極める。また、学校側にとっても生徒数が少なければ制服導入のコストは上がる。そのため、地域の学校で同じデザインの制服を導入する地域共通型の動きは今後も各地に広がりそうだ。

〈協同/加工内製化と企画支援で/別注向けに特化〉

 服飾資材製造卸の協同(岡山県倉敷市)は、捺染などの2次加工の内製化やワッペンなどの服飾資材の企画支援システム「別注便」の活用を通じて、学校制服の別注向けに特化した体制を整える。

 昨年2月、本社を置く児島域内にDTF捺染機を導入した。転写シートにインクジェットで捺染した後、熱で転写する技術で、体操服などの捺染に使用する。

 製版式の捺染と異なり版代が不要で、転写シートの状態で保管できるため、短納期に対応できる利点がある。学校ごとに独自の捺染を施すことで別注化し、顧客の製品在庫リスクを軽減できる。

 加工の内製化によって、工場間の移動にかかる横持ち運賃の削減にもつながった。服飾資材発注と加工委託先を一元化できる利点もある。西川源徳社長によると「複雑な服飾資材手配の手間を省き、顧客の企画担当者の業務を軽減したい」とする。

 業務軽減のため活用が進むのが、服飾資材の企画支援システム「別注便」。インターネット回線を介して同一のシステムに接続し、ワッペンやボタン、バッジマークなどの企画依頼から納品までを一元管理できる。

 制服をブレザーへモデルチェンジ(MC)する動きが全国的に活発になる中で、新規制服採用を決めるコンペの件数は新型コロナウイルス禍前と比べて「3倍に増えた」と言う。同支援システムによって増加するMCに対応することに加えて、企画情報の拠点間共有や過去の意匠をデータベースとして活用できる。