特集 スクールユニフォーム(1)/MCの舞台は中学校

2024年05月31日 (金曜日)

 性的少数者(LGBTQ)への配慮から、性差の感じられない制服へとモデルチェンジ(MC)する動きが強まっている。特に中学校でこの動きが顕著で、2020年ごろから活発化。昨春はMC校数が前の年に比べて300校超増え、748校と過去最多を更新した。自治体単位で制服をMCする動きも増えるなど、この動きは今後数年続くとみられる。ここでは制服MCの現状と背景を見ていく。

〈23年に過去最多/地域共通型も増加に拍車〉

 ニッケの調査によると、24年度入学商戦のMC校数は713校となった。過去最多を記録した昨年の748校には及ばなかったものの、引き続き700校台と高い水準を維持している。

 この背景にはLGBTQへの配慮がある。伝統的な詰め襟服、セーラー服は見た目の男女差が明確であることから、性差を感じさせないブレザー制服に変更する動きが全国的に広がっている。

 LGBTQへ配慮する動きが活発になったきっかけの一つとしては、文部科学省が15年に出した「性同一性障害に係る、児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について」という通知がある。性的マイノリティーへの適切な理解や、学校における適切できめ細やかな対応を求めたものだ。これらも要因となってLGBTQへ配慮する制服の開発が進行。大手学生服メーカーのトンボや菅公学生服は16年の展示会でLGBTQに対応する制服を発表している。

 MCの動きが特に顕著なのが中学校。中学校では、詰め襟、セーラー服を採用する学校が多かったためだ。今春のMC713校は過去2番目の多さだが、中学校だけを見ると、前年から9校増やし587校と過去最多を更新している。中学校でのMCが増え始めた20年(163校)と比べても、ここ数年の急増具合が分かる。

 自治体単位でデザインを統一した標準服を導入する“地域共通型”や“行政型”などと呼ばれる動きもMCの増加に拍車をかけている。この動きは18年、福岡市と北九州市がLGBTQへの配慮などから、市立の全中学の制服にブレザーを導入することを決めたことに端を発する。自治体単位で標準服を統一するこの事例は注目を集め、全国各地へその動きが徐々に広がりつつある。本特集では8ページで岡山県井原市の事例を紹介する。

〈LGBTQ配慮で急増/学校統廃合もきっかけ〉

 制服MCの始まりは1980年代のブレザーの流行にさかのぼる。その後、著名デザイナーが手掛けるファッション性の高いDCブランド制服の隆盛によって、90年にMC校数が300校を超え、92年には414校とピークを迎える。

 MCは高校を中心に実施されてきたが、2020年にその状況が一変する。LGBTQへの配慮から、詰め襟やセーラー服の採用比率が高かった中学校でMCが増加傾向に。20年に中学のMC校数が高校の実績を上回って以降、急激にその数を伸ばしている。

 22年には、これまで最多だった92年の411校を上回り、432校と30年ぶりに過去最多を更新。さらに23年には前年の約1・7倍となる748校と大幅に増え、今春も700校台で推移する。

 LGBTQへの配慮以外にも制服を刷新するきっかけはある。文部科学省の23年度「学校基本調査」(確定値)によると、小学校、中学校の在学者数が過去最少を更新した。厚生労働省が2月に発表した「人口動態統計速報」によると、昨年の出生数は8年連続で減少し、75万8631人と過去最少となるなど、今後も少子化が進行する。これに伴い、学校の統廃合も進む。統廃合が制服MCのきっかけになる場合もある。文部科学省の調査によると、19~21年度の3年間に公立小・中学校の統合事例が437件あった。

〈全国2割弱がブレザーに/生徒数ベースで半数が更新か〉

 23年度学校基本調査(確定値)によれば、中学校数は9944校(国立68校、公立9095校、私立781校)だった。中学校でのMCが急速に増え始めた20~24年の中学のMC校数の累計は1782校で、この4年間で単純に全国の2割弱の中学校がMCしたことになる。学生服メーカーからは「生徒数ベースで全国の半数はブレザーに変わったのでは」との声も聞こえるようになった。

 国内の中学校全てが制服をMCすることは考えにくいが、過半数の学校で制服の更新が行われるとみられる。このMCの動きは当面は続き、今後数年は高いMC校数水準が続くと予想される。現在、MCの中心は中学校だが、中学校のMCが増え始めた20年から3年以上がたった現在、「その中学生が高校へ入学するタイミングで高校がMCする流れも出てきている」(学生服メーカー)との声も聞かれる。