特集 快適・衛生機能の繊維(3)/快適で衛生的な環境を支える試験機関/QTEC/カケン/大和化学工業・評価技術センター
2024年05月30日 (木曜日)
〈耐切創性試験などに視線/JIS化で注目度上昇/カケン〉
カケンテストセンター(カケン)の東京事業所川口本所は、快適や衛生、安全などのニーズに対応するさまざまな試験・検査を行っている。それらの中でも今後提案に力を入れたいとするのが防護服に関連する試験だ。特に耐切創性試験はJIS化の流れもあり、注目が高まる可能性がある。
「機械的リスクに対する防護手袋の要求性能」を規定した製品規格としてEN388:2016(ISO23388)がある。機械的リスクとは「耐摩耗性」「耐切創性」「耐引裂性」「耐突刺性」を指し、各試験項目は得られた試験結果により、手袋の性能を分類するのが特徴。
アラミドをはじめとする高強度繊維を使用し、機械工場などで使用される耐切創手袋などが評価対象となる。耐切創性では、丸刃物を用いるCoupe test、直線刃物で試験するTDM testの両方に対応する。EN388:2016(ISO23388)は2024~25年度にJIS規格が制定される見込み。
手持ちチェーンソー使用者のための脚部防護服の性能試験にも対応する。性能試験は「JIST8125:2022」に基づいて行い、切断抵抗性やエルゴノミクス(人間工学)、防護範囲、洗濯による寸法変化、使用材料の無害性などの六つが主な試験項目。脚部防護服に加え、履物や手袋などへの対応も進める。
〈試験方法改正でコロナ追加/ウイルスの可視化業務も/QTEC〉
微生物関連試験を中心とする幅広い対応を強みとしているのが、日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の西日本事業所神戸試験センターだ。コミュニケーションの強化によって顧客のニーズを把握し、そこにQTECにしかできないことを掛け合わせる。それによって存在感を示している。
神戸試験センターは、抗ウイルスや抗菌性、抗カビ、花粉・ダニ由来タンパク質測定、抗バイオフィルム試験など、衛生や清潔に資する試験・検査に対応する。「JIS L1922」繊維製品の抗ウイルス性試験方法が改正されたが、繊維評価技術協議会と共同で改正作業を行った。
改正によってウイルス株の例として新たに追加されたのが、SARS―CoV―2(新型コロナウイルス)だった。「世の流れ、時勢に応じて柔軟に対応することができた。新型コロナウイルスの追加は、意義のある取り組みだったと言える」と話す。
試験・検査に加え、高性能電子顕微鏡を用いてウイルス・微生物などの微細構造の可視化業務も進めている。昨年に導入したのが、電界放出形走査電子顕微鏡で、通常の電子顕微鏡では不可能な高解像度の画像を撮影することができる。通常では見えないモノの可視化の意義は大きく、コンスタントに依頼が入っている。
〈顧客の要望に細かく対応/評価方法、開発、分かりやすく/大和化学工業・評価技術センター〉
公的試験機関の大和化学工業・評価技術センター(大阪市東淀川区)は、抗菌性や抗ウイルス性などの評価試験に加え、顧客の要望に応える評価方法の開発・提案にも力を入れている。既存の試験方法がないものでも、要望を聞いてユーザーとともに新しい評価方法を作り上げていく。
同センターは2009年に産業標準化法に基づく試験事業者登録制度に認定・登録され、公的機関としての試験を開始した。大和化学工業の繊維加工剤事業とは人員、設備とも分け、完全に独立して運営されている。JISに基づく証明書発行のほか、SEK(繊維評価技術協議会)の抗菌マークや抗ウイルスマーク、SIAA(抗菌製品技術協議会)の抗菌マーク、JHPIA(日本衛生材料工業連合会)の除菌、抗菌マークなどにも対応する。
試験内容は、抗菌や抗ウイルス、ダニ忌避や蚊忌避、抗アレルゲン、消臭、防炎などが柱。足元では抗ウイルス試験のニーズが継続しているほか、抗菌防臭なども安定して推移する。
近年は顧客が訴求したい内容を聞き、それを分かりやすく伝える評価方法の開発・提案を強化している。大和化学工業とは切り離しての運営だが、スタッフの多くは繊維加工薬剤メーカーでの経験を持つ。繊維や薬剤の知識を生かした提案ができるのが特徴で、顧客と評価方法を作り上げる取り組みが増えている。