先進課題への回答 テクテキスタイル &テックスプロセス 2024(5)
2024年05月20日 (月曜日)
産資もリサイクル素材へ
世界的にサステイナビリティーへの要求が一段と強まる中、産業用繊維分野でもリサイクル素材の活用を目指す動きが強まっている。今回の「テクテキスタイル&テックスプロセス2024」でもリサイクル素材による挑戦が見られた。
東レは、リサイクル繊維を原料の一部に使用したエアバッグやスリングベルトを披露した。エアバッグやスリングベルトなど安全機器・製品は強度などに厳しい規定があり、物性が不安定になりがちなリサイクル原料の使用を避ける傾向が強い。これに対して東レは安全性などを慎重に調査しながら、産業用繊維でもリサイクル原料の実用化に挑戦する。
一つの部材にさまざまな素材が使用されることもリサイクルの大きな障害となる。このため欧州などでは可能な限り単独素材によって部材や製品を構成する“モノマテリル”の流れが強まった。
これに対応しようとしているのが子会社の自動車内装材向け不織布製造、ジーグラーと共同出展した帝人フロンティア。ポリエステル繊維クッション材「エルク」を自動車用途でも提案する。自動車シート材は表皮にポリエステル繊維、ワディングにウレタンを使用するケースが多いが、ワディングにもエルクを使用することでモノマテリアル化が可能になり、リサイクルが容易になる。
帝人フロンティアはそのほか、再生ポリエステル繊維「エコペット」ショートカットファイバーによる機能紙や、ゴム資材向けにケミカルリサイクルポリエステル繊維のシングルエンドコードも紹介するなど産業用繊維分野でリサイクル繊維の提案と普及に力を入れる。
モノマテリアルに焦点を当てた提案としては萩原工業がポリエチレンシートを膜材として打ち出す。膜材はポリエステルモノフィラメント織物に塩ビ樹脂を含侵させたターポリンが一般的だが、萩原工業のポリエチレンシートは基布に高密度ポリエチレン(HDPE)、コーティング材に低密度ポリエチレン(LDPE)を使用することで膜材として物性を確保した。
ポリエチレンのモノマテリアル化でリサイクル性が高まることに加えて、環境負荷が高いとされる塩ビを使わないことによる“脱・塩ビ”のソリューションとしても注目だろう。