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合繊メーカー 増益、赤字縮小相次ぐ

2024年05月20日 (月曜日)

 合繊メーカーの2023年度決算は全社ベースではまだら模様ながら、繊維関連事業は総じて堅調に推移した。増益や赤字縮小が相次ぎ、原燃料費の高止まりに対して価格改定を進めたことや事業構造改革に一定の成果が出ている。

 東レの繊維事業は減収ながら増益。衣料用途は市況低迷の影響を受けたが国内外の商事子会社を中心に堅調に推移した。産業用途は自動車関連の需要が回復し、電気自動車向けも販売が拡大した。全体的に価格改定や高付加価値化を進めたことで利益率が改善している。

一方、炭素繊維複合材料事業は増収ながら減益に。宇宙航空用途は回復しているが、風力発電翼用途は需要調整局面となった。このため風力発電翼関連で減損損失も計上した。一般産業用途も需要が軟化傾向となった。

 帝人はマテリアル事業の改善が進み、赤字が縮小した。アラミド繊維は価格改定の効果もあって増収減益。炭素繊維は増収増益。航空機用途が需要回復もサプライチェーン上の供給制約もあって小幅な伸びとなった。レクリエーション用途も在庫調整で販売が減少した。複合成形材料は価格改定とコストダウン、事業構造改革を進めたことで増収増益だった。

 繊維・製品事業は減収ながら増益。衣料繊維は北米や中国向けの生地・製品販売が堅調に推移し、国内も好調が継続した。産業資材はフィルター向けポリエステル短繊維、人工皮革、インフラ補強材が好調。自動車関連も好調に推移した。

 旭化成のマテリアル事業のうち、繊維を含むモビリティ&インダストリアル事業は増収増益。自動車内装材が生産能力増強の成果もあって販売が増加した。同じく繊維を含むライフイノベーション事業も増収増益。キュプラ繊維「ベンベルグ」、ポリウレタン弾性糸「ロイカ」ともに堅調だった。

 東洋紡の環境・機能材は増収増益。環境・ファイバー分野はVOC回収装置の販売が拡大したが、高機能ファイバーは低調。不織布も衛材や土木建築用途が振るわなかった。機能繊維・商事事業は増収で赤字が縮小した。衣料繊維が構造改革や価格転嫁によって収益性が改善した。エアバッグ基布も回復基調にある。

 一方、苦戦したのはユニチカ。機能資材事業は減収で赤字が拡大した。不織布は販売が低迷し、産業用高強力糸も苦戦。全体として価格改定の効果発現が遅れている。繊維事業は赤字縮小した。ユニフォームや婦人服用途が堅調に推移し、価格改定の成果も上がる。

 決算月が異なるため直接比較できないが、クラレは繊維事業が減収・大幅減益。人工皮革はラグジュアリー用途の需要が減退し、繊維資材もビニロンの対欧輸出が低調。高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」は輸出中心に堅調だった。トレーディング事業は増収増益。繊維関連は資材分野が苦戦もスポーツ衣料用途が好調に推移した。