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岡山県井原市内の全中学/来春から一斉に男女兼用新制服/デニムワッペンで〝らしさ〟表現

2024年05月16日 (木曜日)

 岡山県井原市内の公立中学全5校が2025年度から新制服を採用する。性的少数者(LGBTQ)へ配慮したジェンダーレスタイプのブレザー制服で5校統一のデザイン。市内で生産が盛んなデニムを使った、“井原市らしい”ワッペンは、各校ごとのオリジナルとなる。制服は菅公学生服が供給。来春入学予定の新入生267人が着用する。

 ブレザーはポリエステル80%・キュプラ20%のニットタイプで、ストレッチ性が高く動きやすい。家庭で洗濯が可能なことに加え、シワになりにくく手入れも容易だ。

 スラックスやスカートなどボトムスには「デニム風の青を基調とした柄を取り入れた」(岡山菅公学生服担当者)。各校のオリジナルワッペンは同市で生産された綿100%のデニム製となる。各校の生徒がデザインを考えた。

 LGBTQへも配慮する。ブレザーは前合わせを左右自由に変えられる男女兼用デザイン。ボトムスは男子と女子の2タイプのスラックスとスカートに加え、キュロットタイプもそろえる。

 市内の中学校ではこれまで男子は詰め襟、女子はセーラー服を着用していた。「一番新しく制服を変更した学校でも30年以上が経過していた」(同市中学校制服検討委員会の田中正行委員長〈美星中学校長〉)など、長年制服が見直されていなかった。ジェンダー対応や機能性などの面から対応が必要と考え、新しい制服を導入することにした。

 21年に市内中学校校長会で制服変更の必要性について協議を開始した。翌年5月に市内中学の保護者692人を対象に制服に関するアンケートを実施。その結果を基に各校のPTAなどから意見を集約した。制服の値段が多少上がっても機能性を重視する意見が多く、制服変更に後ろ向きな学校が少なかったことから、制服検討委員会を組織して進めていくことにした。

 制服の価格を抑えたものにしたいとの声も多かった。少子化で生徒減が進む中、人数が少ない学校が制服を導入するとなるとコストが高くなる。そのため、スケールメリットを生かした、市内統一型の制服を取り入れることにした。

 23年9月、中学校長、教職員代表、小学5年生の保護者代表、同市教育委員会担当者で構成される第1回井原市中学校制服検討委員会で25年度に新制服を導入することを決めた。同年12月にコンペを実施。4事業者が参加した結果、総合点の高かった菅公学生服の提案が採用された。コンペでは5校を巡回し、生徒も採点に参加した。

 20年以降、中学校を中心に制服を性差の感じられないブレザー制服へとモデルチェンジ(MC)する動きが全国的に活発になっている。ニッケの調査によると、今春の入学商戦のMC校数は過去2番目の多さとなる713校。中学校に関しては587校と過去最多を更新した。同市のように自治体単位でMCが行われるケースも増えつつある。