先進課題への回答 テクテキスタイル &テックスプロセス 2024(3)

2024年05月16日 (木曜日)

用途広がる高性能繊維

 産業用繊維の国際見本市「テクテキスタイル」(4月23~26日、ドイツ・フランクフルト)の見どころの一つに高性能繊維がある。今回も日本の合繊メーカーは多彩な高性能繊維を提案した。

 日本企業で特に大規模なブースを構えたのが東レグループ。東レ本体の商材をトーレ・インターナショナル・ヨーロッパ(TIEU)が提案したほか、韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、米国のトーレ・フロロ・ファイバーズ〈アメリカ〉(TFA)とゾルテック、英国のトーレ・テキスタイルズ・ヨーロッパ(TTEL)で共同ブースを構えた。

 東レ本体の素材として液晶ポリエステル繊維「シベラス」を紹介した。高強力、高弾性、寸法安定性に加えて湿潤時強度の高さを生かしてロープ用途での実用化が進む。さらにスリングベルトなど用途開発にも取り組む。

 TAKはメタアラミド繊維「アラウィン」を提案したが、特に注目なのがアラウィン機能紙。耐熱性、防炎性、絶縁性に優れるが、ハニカム構造体にして複合材料基材としても使用するアイデアも紹介し、新たな用途の開拓に取り組む。

 TFAはフッ素繊維「テフロン」が製造工程や製品に含まれる有害物質を極限まで除去していることを紹介し、フッ素繊維の安全性を改めてアピールした。ゾルテックの耐炎化糸「ゾルテック」も幅広い用途へ提案した。

 クラレは、高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」の単糸繊度28デシテックスタイプを披露し、産業用だけでなくバックパックなどスポーツ・アウトドア用途への拡大を図る。実績豊富な難燃ビニロン繊維も改めて紹介し、海外市場での販売拡大を狙う。

 東洋紡エムシーは欧州子会社の東洋紡ケミカルズ・ヨーロッパで出展した。東洋紡グループがテクテキスタイルに出展するのは10年ぶり。PBO繊維「ザイロン」、高強力ポリエチレン繊維「イザナス」「ツヌーガ」を改めて紹介した。ザイロンの体積比での強度の高さとイザナスの重量比での強度の高さ、イザナスやツヌーガの接触冷感性などそれぞれの素材特性を生かしながら新規用途の開拓に取り組む。

 東洋紡エムシーのイザナスを使った織物「テクノホーススティール」を打ち出したのは帝人フロンティア。アウトドア用バックパックで採用が拡大している。

 近年、高強力な高性能繊維を使った薄地織物がアウトドア分野に採用されるケースが多い。産業用途が中心の高性能繊維の新たな用途として注目される。