繊維機械/世界需要に回復の兆し/中国など動きだす

2024年05月14日 (火曜日)

 糸やテキスタイルの設備投資意欲は2020年秋からの世界的な好況を経て23年は急激に冷え込んだが、後半ごろから回復の兆しが出てきている。トルコなどはまだ戻らないが、中国が大手中心に動きだすなど急回復する地域もあり、現状を過熱気味とみる声もある。(星野公清)

 20年秋ごろから2年強続いた繊維機械の好況は新型コロナウイルス禍が大きく関係していた。移動制限や米中関係の悪化などに対応する生産地の再検討が進んだほか、設備投資に関する補助金など各国の景気対策や、部品不足・物流の混乱による先までの発注などもあって、受注が史上最高水準になる機械メーカーも多かった。

 22年後半には天井感が出だし、昨年の前半まで需要は大きく冷え込んだ。好況時が通常より長かった分反動も大きく、昨年春には、「受注がなくなり、生産が止まった」という声もあった。

 昨年後半から回復の兆しが出始めた。投資意欲が戻らない国がある一方で、大手を中心に動き出した中国など分野によっては急回復している国が出てきている。

 回復が早かった分野の一つが紡績糸関連だ。村田機械は23年4~8月に落ち込んだもののその後は回復し、自動ワインダー、渦流精紡機「ボルテックス」とも受注は堅調に推移する。自動ワインダーは、昨年、イタリア・ミラノで開かれた国際繊維機械展示会「ITMA2023」で発表した新機種「AIcone」(アイコン)に切り替えていくための生産ライン整備で一時的に稼働が落ちているが、整備完了とともにフル生産に戻る見通し。

 渦流精紡機「ボルテックス」もフル生産中で、現在の納期は1年半ほど。主力のレーヨン用とポリエステル用を中心に需要が増えている。リング紡績に比べて工程が少なく生産性も高いことなどから、入れ替えでコストダウンや省人化につなげる動きが出ている。

 ボルテックスは中国がけん引役で、自動ワインダーは、中国、インド、バングラデシュ、インドネシア、中南米など世界の主要地域で堅調に推移する。

 織機関連では世界の需要が停滞する中で、年明けから中国の動きが急回復している。現地織機メーカーへ広く開口機を供給するストーブリの中国拠点は年明けから動きが戻り、1~3月は史上最高水準の引き合いがあったもよう。イテマの中国拠点も年明けから受注が大きく回復していると指摘する。

 丸編み機の福原産業貿易も今5月期は上半期に苦戦したが、昨年12月からの下半期は回復し、通常の状態に戻している。前の好況時にけん引したトルコはまだ回復が遅いが、バングラデシュ、インドネシア、パキスタンなどが回復し、中国も大手中心に動きだしている。ただ、足元のスペースは埋まっているものの、先は読みにくい状況で、大口の注文が減って小口が多くなる形が顕著になっていると説明する。

 一方、横編み機はまだ本格的な回復は見られないという。島精機製作所の前3月期の横編み機受注は前年比27・4%減で受注残高は53・2%減だった。欧州はその前の期の好調の反動が出て低調が続いている。一時は上向きかけたトルコも動きが鈍い。アジアではベトナムなど回復に向かう国がある一方、中国の投資意欲は回復していないと言う。