初日から多くの来場者/初出展企業のブースも盛況/PTJ25春夏

2024年05月10日 (金曜日)

 日本ファッション・ウィーク推進機構主催の生地商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)25春夏」が9日に開幕した。会場の東京国際フォーラム(千代田区)には、開場直後から高付加価値生地を求めて多くの買い付け担当者らが訪れた。今日10日まで質の高い商談が行われる。

 今回のPTJは、日本の企業のほか、韓国や中国、トルコ、香港、豪州の企業がブースを構え、合計で70社が出展。このうち8社が新規出展で、3社が復活出展企業として名を連ねる。新規出展企業は「新しい顧客の開拓」「会社の認知度の向上」が目的と口をそろえるなど、成果獲得への期待を示した。

 新規出展企業のブースはこの日午前中からにぎわいを見せた。日本製を中心に約450マークの生地を備蓄販売するのがKIRARIだ。現物在庫の大部分を中国・上海の倉庫で管理しており、中国アパレルとの商売をメインとしているが、「第2、第3の市場を探すために出展」した。

 海外企業では豪州のインティミティが初出展し、ポリエステル繊維「セリス」を紹介した。工業堆肥化が可能なことが特徴であるほか、低温での染色や親水性、コットンタッチといった機能も併せ持つ。わたでの販売を基本とし、スポーツやインナー用途などで訴求する。

 「PTJ24春夏」で始まった次の売れ筋生地の魅力を啓発する「ワッツネクスト―テキスタイル―」コーナー、「多様性」を空間構成のテーマとした「トレンド&インデックス」コーナーなどにも多くの来場者が足を運んだ。

〈短繊維ゾーン/見え方や風合いこだわる〉

 天然繊維を中心とした短繊維ゾーンでは、綿や麻使いなどで加工や原料に趣向を凝らすことで、見え方や風合いにこだわった生地が多数並んだ。

 山﨑テキスタイルは遠州産地にある鈴木晒整理の加工を生かした生地を訴求。綿100%の強撚ガスボイルに独特のハリと光沢感を付与する「DM加工」と反発感や硬い手触りとなる仕上げ加工を組み合わせた。

 古橋織布は従来の綿に加えて、葦(ヨシ)を使った生地を提案した。緯糸に綿・ヨシの混紡糸を使用することで、ヨシのフシを出しナチュラルでざらつき感のある風合いを表現した。

 春夏素材の代表である麻をメインに打ち出したのが滋賀麻工業だ。来場者から注目を集めたのがリネン100%の先染め。鮮やかで明るめの色合いが人気だった。キュプラ使いもオチ感などで婦人向けの顧客から好調だった。

 リネンを主力とするタケミクロスはリネン100%のカラミ織りをアピール。遠州では元々カラミ織りが盛んで、竹内洋輔社長は「若い人にもっと遠州のことを知ってもらいたい」と話した。綿を中心としたコール天も並べた。

 一方で麻素材は原料の高騰が課題。3~4年前と比べて倍以上の値を付けている糸もある。滋賀麻工業の山田清和社長は「綿混などで混率を落とす要望もあるが、付加価値を高め、麻の魅力を伝えるためにも100%品を推している」と話した。

〈長繊維織物ゾーン/多様な角度から訴求〉

 化合繊やシルク、各種機能素材が集った織物長繊維ゾーンでは、多様な角度での打ち出しが行われた。その中でも機能訴求やトレンド重視、新商品提案、暑く・長い夏への対応といった動きが目を引いた。

 第一織物は、秋冬向けを主力としているが、秋と冬の期間が短くなっていることへの対応から春夏向けの強化に力を入れており、今回のPTJでも春夏向け新作を打ち出した。中空糸使いの「ディクロスエアロ」をベースに織組織・柄を研究して開発し、スカートやワンピース、サロペットといった用途での採用拡大を目指す。

 宇仁繊維は、売れ筋の「ミラクルウェーブ」の“兄弟素材”で、ハリ感が特徴の「オーガンジーリップル」、透け感とハリ感と表面変化を併せ持つ「オーガンジージャカード」などを並べる。第1回の「ワッツネクスト―テキスタイル―」で1位に輝いたストレッチシアーサッカーはプリントと組み合わせて提案した。

 川田ニット/ケーシーアイ・ワープニットは、「トコシエ×アダプテーション(機能環境)」をテーマに展示した。ファクトリーブランド「tococie」(トコシエ)シリーズをベースに、めまぐるしく変わる環境の変化に対応する撥水(はっすい)や超軽量、パッカブルといった機能を持つ生地をそろえた。

〈刺しゅう・染色など/消費志向の変化へ対応〉

 刺しゅう・レース・プリント・染色・後加工のゾーンでは、ジェンダーレスやカジュアル化といった消費志向の変化への対応を意識した展示が多く見られた。

 初出展のファイブワンは生地の卸売業でありながら、栃木県内で刺しゅう工場を運営する。東京都江東区には自社の生地倉庫を開設し、常駐する社員が検尺・検反や梱包(こんぽう)などについての提案も行っている。

 自社の施設を背景とした提案力をアピールする機会を作るため、PTJへの出展を決めたという。ブースでは刺しゅう工場や倉庫の機能性を生かした生地の供給体制について紹介している。

 刺しゅうメーカーのサン・ルックとラッセルレースの桜井商店は、初めて合同で出展した。「単体では商品作りにも限界がある」と、2社はそれぞれの強みを生かした商品開発に共同で取り組んでおり、その成果を披露している。

 ストレッチ性と立体感を持たせた生地などと共に、ジェンダーレスが進む風潮に合わせメンズにも刺しゅうを取り入れることも提案する。

 敦賀繊維(大阪市中央区)は、エンプロイダリーレースのメーカー。レースは福井県敦賀市の自社工場で管理する。

 今回の出展のポイントに「カジュアル感」を挙げ、柄やデザインの種類を広げた。

〈日覺氏ら視察〉

 PTJ会場には、日本繊維産業連盟(繊産連)の日覺昭廣会長、東レの大矢光雄社長が視察に訪れ、各ブースを熱心に見て回った。

 日覺会長は「匠(たくみ)の技術を生かして、驚くような生地を作っている。本当に素晴らしい」とした。その上で「価値に見合った価格での販売が日本繊維産業の課題」と指摘した。

 大矢社長は「感染症が落ち着き、出展企業一社一社が元気になったという印象を持った」とし、「商品力や独自性という意味で日本繊維産業がさらに発展すると感じる」と話した。