ごえんぼう
2024年05月10日 (金曜日)
アートがより身近なものになってきた。美術館の大型企画展に行列ができ、百貨店では若者を含む一般の人も作品を購入するようになった▼筆者も連休中に「大吉原展」を鑑賞した。浮世絵や美人画を主体に、約250年続いた江戸幕府公認の遊郭だった吉原の歴史ときらびやかな文化を紹介。花見は吉原の外から桜を移植して行われた。半面、VRと立体模型で再現された街並みや遊女の生活は、塀に閉ざされた虚構の華やかさを物語っていた▼遊女の性的搾取を軽視していると開催自体危ぶまれたが、解説とともに丹念に見れば杞憂。虐げられた遊女による放火の頻発、明治政府による芸娼妓解放令後も吉原で生きるしかなかった大半の遊女が「主体的にとどまっている」と、より一層蔑視された説明もあった▼現代の人権感覚から過去の文化を否定する風潮が強まるが、そのアートが生まれた時代性を含めて伝える方が大切だろう。