紡績 純綿でも合繊並み機能
2024年05月08日 (水曜日)
紡績各社は綿100%でありながらも、合繊並みの機能や新感覚の素材感を持った開発に取り組んでいる。環境配慮に加え、土に返るという循環型の取り組みへの関心の高まりを受け、新たな商機を捉える。
米調査会社によると、綿花の市場規模は全世界で年間約500億㌦に上るとされ、2027年までに年3%程度の成長が見込まれる。国内では綿花の輸入量が減少傾向にあるが、天然繊維としての綿に対するイメージや、環境配慮に対する意識の高まりで、綿100%素材へのニーズは依然として多い。不要となった繊維製品を回収し、循環させる動きも活発になる中、これからモノマテリアル(単一原料)による商品開発が増える可能性もあり、紡績各社では綿100%でも付加価値の高い素材開発を進める。
特に綿100%でも合繊並みの機能を持った素材開発を加速している。大和紡績は綿100%でありながらも吸水性を高める特殊な紡績法を採用し、合繊並みの速乾性を持つ「ミラクルドライ」を開発した。抗ピリング性は4級以上で洗濯を繰り返しても毛羽立ちが抑えられ、奇麗な外観を維持できる。
クラボウの綿を分子レベルで改質した「ネイテック」では、素材の風合いを損なわず「吸湿発熱」「吸放湿」「消臭」などの機能を付与し、繰り返し洗濯しても機能を維持できる。これまでインナー用途への採用が多かったが、最近では「遮熱・UVカット」機能を持ったネイテックも開発し、アウターへも提案する。
ストレッチへの要望も高い。綿100%のストレッチ生地ではクラボウが「バンジーコットン」、日清紡テキスタイルが「アスタリスク バイ ナチュレッシュ」の販促を進めており、いずれもワークウエア用途での採用が進む。火を使う作業現場では綿100%素材の需要が多く、難燃加工と組み合わせた素材開発も進む。
日清紡テキスタイルでは汗をかくと肌触りの良さから綿100%を好むユーザーも少なくないことを受け、シャツ地向けに透け防止機能を持った綿100%織物を開発。薄地だが、特殊な加工技術で透け感を抑えた。
シキボウは「日本唯一」の連続シルケット糸「フィスコ」の販促を強化。シルクのような艶やかな光沢感に加え、染着性が高いため、洗濯後の色落ちが少なく、生地の奇麗な表面感が長く続く。昨年、米国のクラウドファンディングへタオルを出品するなど、海外での認知度向上にも取り組む。