春季総合特集Ⅳ(6)/Topインタビュー/スタイレム瀧定大阪/社長 瀧 隆太 氏/トライ&エラー続ける/海外ストック機能を増強

2024年04月25日 (木曜日)

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)は2024年1月期のグループ決算で、前期比増収増益を果たした。引き続きけん引役となったのは、輸出や第3国向けなど海外市場向け生地販売だ。今後も海外拠点への人材派遣や展示会への参加を通じて拡大を図る。そのためにも力を注ぐのが、仕入れ先との関係強化。瀧隆太社長に考えを聞いた。

――貴社が取り組む共創・協働とは何でしょうか。

 共創・協働には、課題解決型のものと、新たなイノベーションを生み出すことを狙うものとがあると思います。当社にとってはどちらも大事です。特に後者は容易ではありませんが、トライを続けています。「プラス∞グリーンプロジェクト」として取り組むポリエステル再生培地「トゥッティ」などです。

 トゥッティは、従来廃棄されていた衣服などのポリエステル繊維を再生した「繊維から生まれた土」で、この土で野菜や花、苗木などの成長を楽しむことができます。サンゲツともこのほど、カーテンに使用した生地の廃棄量を削減しつつ、トゥッティでオフィスなどに緑を増やす新たな取り組みがスタートしました。

 プラス∞グリーンプロジェクトではこれまでに60社ほどの企業・団体と協業してきました。こうした地道な取り組みはなかなか社会にインパクトを与えるには至りませんが、トライしたことで数多くの“気付き”は得ています。トライ&エラーでこれからも続けていきたいと考えています。

――仕入れ先との関係も共創・協働が求められると思いますが。

 当社が構築するサプライチェーンのパートナーとして、全ての仕入れ先は当社と一心同体の関係であると考えています。以前のような単なる受発注の関係では持続性はなく、将来を開けません。一緒に課題を克服していかなければ未来は見えてきません。仕入れ先との強固なパートナーシップは必須の要件です。

 われわれには商品を顧客に届ける供給責任があります。そのためには仕入れ先の特徴や実態、課題をよく知る必要がある。3年前にテキスタイルSCM推進室を新設したのはそのためです。納期短縮やコスト削減を狙い、まずは情報収集に努めました。その後の積極的な活動によって、各仕入れ先が置かれている実態の把握がかなり進みました。一部ですが、課題解決に向けた共創・協働の取り組みもスタートしています。

――2024年1月期を振り返って。

 当社と海外法人などグループ企業14社のグループ連結では、売上高が前期比3・1%増の792億円となり、売上総利益が16・6%増の161億円、営業利益が28・2%増の45億4200万円と増益も果たしました。

 品目別の売上高は、原料が4・3%増の24億6500万円、生地が3・8%増の438億円、衣料製品が1・8%増の286億円、ライフスタイル製品が1・0%増の33億6500万円、その他が17・8%増の9億9500万円となり、全品目が伸びました。

 ただ、上半期は総じて好調な推移だったのですが、11月ごろから失速したのは気掛かりです。アパレルが海外の縫製工場と直接取引する直貿も増えているようです。機会損失も発生しています。染色工程などで納期遅れが頻発しているためです。

――海外市場向け生地販売は。

 売り上げ、利益とも貢献度が高かったですね。海外現地法人の売上高の単純合算は前の期の157億円から170億円に拡大しました。中国、欧米、中東などいずれも10~15%伸びたという感じです。

 中国の市況低迷など懸念材料もありますが、まだまだ伸ばせるとみています。そのため、中国のみだった海外での生地受け渡し(備蓄、ストック)機能を、韓国とベトナムにも広げます。

――今期の見通しを。

 非常に不透明ですが、全体で定番から付加価値化へのシフトを進めます。国内生産では全力で納期短縮を実現し、それを輸出拡大につなげます。人材については新卒、中途の両方で増員を図り、海外への赴任者ももっと増やしたいと考えています。

〈最近のプチ贅沢/レコードに触れる時間〉

 瀧さんは最近、アナログレコードにはまっている。幼稚園から高校までピアノをたしなんでいたこともあり、通勤中などにジャンル問わずよく音楽を聴く。レコードも「ノンジャンルでジャケ(ット)買いしている」とのことだ。時間が取れないため購入はもっぱらネットだが、「いつか店頭でいろいろなレコードに触れてみたい」と夢を膨らませている。「古いメディアに触れる時間がなんとも贅沢」だが、「家でゆっくり聴く時間がない…」。

【略歴】

 たき・りゅうた 1999年ソニー入社。2007年瀧定大阪入社。08年4月から瀧定大阪社長。18年4月から兼スタイレム会長。瀧定大阪とスタイレムの吸収合併・社名変更に伴い21年2月からスタイレム瀧定大阪の社長