春季総合特集Ⅲ(8)/Topインタビュー/ユニチカトレーディング/社長 久内 克秀 氏/100年後も必要とされる/今期も事業構造改革徹底

2024年04月24日 (水曜日)

 「100年後も必要とされる企業であり続けるためには、連携と共創によって新しい価値を創造し続けることが欠かせない」――ユニチカトレーディングの久内克秀社長は強調する。現在、シキボウとの連携が進められているが、製造・開発・販売で徐々に成果が表れだした。2024年度(25年3月期)も事業構造改革を徹底し、黒字浮上を目指す。

――繊維業界で共創・協働の取り組みが増えています。

 当社もシキボウさんとのアライアンスを進めています。メーカー機能を持つ企業同士が協業することで販売面だけでなく技術面や生産面での連携が可能になります。それぞれの強みである素材開発力や加工技術を掛け合わせることで協業イノベーションを起こし、新しい付加価値を生み出すことが狙いです。100年後も必要とされる企業であり続けるために、共創や協業によって“リ・ボーン”(再生)を実現しようということです。

 実際に国内の自家工場の活用としてシキボウさんの富山工場で当社のバイメタル構造ポリエステル繊維「Z―10」を使った長短複合糸の開発が進められていますし、当社の海外子会社がシキボウさんの海外子会社で生産する縫製品を活用しようとしています。共同開発も徐々に進んでおり、合同展示会も3回開催しました。また、シキボウさんのインドネシア紡織子会社であるメルテックスが火災に遭った際には、当社のインドネシア紡績子会社であるユニテックスで代替生産を請け負うといったBCP(事業継続計画)上の効果もありました。

 こうした協業は繊維業界で増えてくるのでは。もっと言うと、ニチボーと日本レイヨンが統合してユニチカが誕生して以降、繊維業界では大型の企業統合はありません。今後、大型の企業統合も必要かもしれません。

――23年度を振り返ると。

 当初予想に対して売上高は会計基準上の調整の影響で若干下回る可能性がありますが、利益面は上振れしており、営業損失も大幅に減少する見通しです。衣料事業は増収増益で推移しました。特にユニフォームが増収増益でした。値上げ効果に加えて企業別注が好調。白衣も堅調でした。一般衣料は増収ですが、生産減少で総原価が上がったことで利益が減少しています。産業資材事業は資材部門が円安の影響で減収です。ただ、利益面は22年度が低調だったため前年度実績は上回っています。ケミカル部門は市況低迷で大幅減収・減益です。デニムの輸出などグローバル事業も欧州市場の市況が悪く、減収減益でした。

 関連会社は、学販体育衣料中心のユニチカメイトが円安による海外調達コスト増加で苦戦です。生産子会社である紡績のユニチカテキスタイルとユニチカスピニング、染色加工の大阪染工も総原価が上昇して厳しい。海外はベトナム子会社が減収減益でしたが、インドネシアと中国の子会社は例年並みです。

――24年度の重点施策は。

 中期経営計画で「不採算事業の抜本的対策」「サステイナブル素材・機能素材の開発・販売促進」「グローバル生産体制、サプライチェーンの強化と2次製品ビジネスの拡大」を重点施策として掲げていますから、今期もそれを実現するために「見直す」「伸ばす」「減らす」「増やす」を念頭に、できるとことをとことんやり切る方針です。

 「見直す」は自家工場をどうするか。例えば大阪染工は現在、社外からの受託加工は止めて、100%自家向け加工です。しかし、受託加工を再開してほしいという声が根強くあります。加工料金との兼ね合いも含めて今後どうするのか考えます。また、採算が厳しい備蓄ワークウエア向けなど低採算ビジネスの見直しもテーマです。

 「伸ばす」としてグローバルアライアンスによる海外市場開拓に取り組みます。そしてサステイナブル素材などの販売を「増やす」。昨年もカポック繊維を活用した複重層構造糸「パルパー×カポック」を発表しました。繊維to繊維リサイクルに向けた取り組みにも着手したい。社内の若手有志と社外のクリエーターが連携してサーキュラーエコノミーの実現を目指す「モリビト」プロジェクトから何が出てくるかも楽しみです。

〈最近のプチ贅沢/行列に並ぶのもまた贅沢〉

 先日、所用で百貨店に立ち寄った久内さん。夫人にスイーツをプレゼントしようと店内を見ていたところ、ものすごい行列になっている店を見つけた。「せっかくだからと初めて行列に並んだ」のだそうだ。待ち時間およそ20分。「不思議なもので普段、時間に追われる生活をしていると待つだけの時間がちょっと贅沢に感じた」のだとか。もちろんスイーツは夫人にも大好評で、「おかげで家庭での私の株も少し上がりました」。

【略歴】

 きゅうない・かつひで 1985年三和銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。大阪融資部長などを経て2014年ユニチカ出向・経営計画推進部長、15年ユニチカ入社・執行役員経営企画部長、18年上席執行役員経営企画本部長、20年常務執行役員、23年4月からユニチカトレーディング社長を兼務、6月27日付でユニチカトレーディング会長就任予定