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東レ・学販向け 総合力で市場深耕

2024年04月24日 (水曜日)

 東レの学販向けは2025年入学商戦に向け、詰め襟服やブレザー、体育着まで幅広いアイテムに対応できる総合力で市場を深耕する。環境配慮型素材や梳毛調ポリエステル織物「マニフィーレ」などの差別化素材、インクジェット(IJ)捺染による柄物生地など「いろいろな選択肢を提供できる」強みを生かす。

 同社の学販向けは詰め襟服の生地供給が多く、LGBTQ(性的少数者)への配慮から制服モデルチェンジ(MC)でブレザー化が進んだことで、苦戦を強いられてきた。しかし、今入学商戦では詰め襟服向けの販売が横ばいか微減にとどまったほか、ブレザー向けにマニフィーレ、シャツ向けにトリコット生地の販売が増加。体育着向けが在庫調整の影響を受けたものの、学販向け全体では前年に比べ「何とか維持することができた」。

 25年入学商戦向けでは、電気・ガス料金の負担を軽減する政府の補助金が5月で終了することや、人件費、物流費など諸経費の上昇などから、昨年に続き学生服メーカーへ値上げを要請。そのため、販売数量の減少を懸念するが、この数年で「種まきしたものの芽が出てくる」として、差別化素材や新商品の拡販で攻勢をかける。

 IJによる柄物生地では「関心が高く、生産面での安定供給や短納期を訴えられる」として、早ければ25年入学商戦からの採用を目指す。制服MCのブレザー化が進み、ボトムでの柄物生地の需要が増える中、生地を備蓄していれば先染めに比べ納期を「6分の1から8分の1」に短縮できる。生徒数が少ない学校へも提案がしやすくなるとともに、デザイン性の幅も広がる。もちろん先染めも提案でき、糸や柄も含め、選択肢の幅の広さでニーズを捉える。

 バイオ原料ポリエステル「エコディア」やペットボトル再生繊維「&+」(アンドプラス)といった環境配慮型素材の採用も増加。学生服メーカーの一部では環境配慮型素材のみを提案してほしいとの要望も出てきた。

 ワークウエアやサービスウエアで売れ筋のストレッチ機能ポリエステル織・編み物「ライトフィックス」では、体育着向けに採用が増えており、ブレザーやボトムへの提案も強める。さらに独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」を用いた新たな素材開発も進む。

 詰め襟服は依然として需要が減少傾向にあるが、「ボリュームゾーンであり、シェアは維持したい」。学生服メーカーが採算悪化から生地の品番統一で定番商品の見直しを図りつつある。「当社の総合力を生かせば、まだまだできることが多い」として、定番商品に同社製生地が採用され続けるアプローチも強める。