2024年春季総合特集(12)/Topインタビュー/ボーケン品質評価機構/理事長 吉田 泰教 氏/環境、人権で役割担う/サステ事業開発を強化

2024年04月22日 (月曜日)

 「従来型の納品前検査だけでなく、お客さまと共同で品質保証するパートナーへと転換を進めている」と話すボーケン品質評価機構の吉田泰教理事長。特に環境や人権といった課題で社会や繊維業界に貢献する第三者試験機関へと役割を進化させた。そのためにも「専門組織とのアライアンスは欠かせない」と言う。

――繊維業界でも共創・協働の動きが加速しています。

 背景には事業の対象分野が拡大していることがあるでしょう。当機構も従来型の納品前検査業務だけでなく、お客さまと共同で品質保証するパートナーへと転換を進めており、業務も試験だけでなく品質サービスに拡大しています。特に環境や人権に関する課題で社会や繊維業界に貢献することを目指しています。そうなると単独でできることには限界があります。やはり他の専門組織とアライアンスを組んで取り組むことが欠かせない。その点で当機構は早くから共創・協働に取り組んできました。海外の大手検査機関であるSGSとの提携は1980年代から続いています。バイオメディカルサイエンス研究会(BMSA)との協業やユニチカガーメンテックとの提携によってニッチな分野にも対応できる体制になっています。信州大学のLCA人材育成コンソーシアムにも参画しました。環境や人権といった課題に対してサプライチェーンをつなぐ役割を担う第三者試験機関となることが目標です。

――今後の重点戦略は。

 「サステイナブル事業開発と技術力の強化」「ウェルビーイング事業開発と技術力の強化」「ラボラトリマネジメントの強化」を掲げています。サステイナブル事業として品質管理やCSR監査、サンプルチェックなどを行う品質支援事業は人員を増やしました。品質支援事業本部が繊維、生活産業資材、海外の各事業本部と連携し、対応を強化しています。信州大LCA人材育成コンソーシアムでLCA手順書やプラットフォームの作成にと取り組みます。業界団体や他社との協業でLCA算出コンサルティングも実施します。当機構の品質支援業務はお客さまが自立的に取り組める体制や人材を育成することを支援することに特徴があります。

 認証分析事業は繊維の測定技術を他分野にも応用します。例えばVOC測定技術を自動車内装材や半導体関連に展開するなどです。食品分野も食品衛生法に基づく試験だけでなく、包装材全般への分析サービスを提供します。そのためホーヘンシュタイン〈香港〉と協業し、欧州連合(EU)向け食品接触材料の分析・コンサルティングサービスを開始しました。環境サステイナビリティー分野でもHiggインデックスやZDHCなど海外のサステイナビリティープログラムトレーニングと第三者検証や、第三者認証機関と協業したカーボンニュートラル関連ソリューションの提供に取り組みます。

――ウェルビーイング事業の開発やラボラトリマネジメント強化とは。

 一つは、評価方法がない製品に対し、カスタマイズ試験による機能性評価技術を開発し、製品の実際の使用の際の性能を評価することです。例えば電動ファン付きウエアやアシストスーツの性能評価などが挙げられます。業界団体活動を通じた社会貢献や業務提携先との事業も推進します。例えばBMSAとの協業によるバイオセーフティー講習会の実施やユニチカガーメンテックと連携した繊維製品の持続冷感性評価の開発など成果も上がり始めました。生活産業資材事業も電気安全や食品などに事業領域を広げます。ラボラトリマネジメントは、資格者や技術管理者の教育・訓練体制を強化し、キャリアパスと職務要件書、資格要件などを整備します。内部監査の体制も拡充し、ガバナンスを強化します。

 こうした戦略を実行するためには組織戦略が重要です。「人的資本経営」によって「専門家人財」がそろう組織を目指します。ガバナンス体制の再整備やリスクベースアプローチからの課題抽出などによるサステ経営、デジタルトランスフォーメーションによる生産性や顧客サービスの向上にも取り組みます。

〈最近のプチ贅沢/喫茶店で休日の朝〉

 現在、東京に単身赴任中の吉田さん。「休日の朝は喫茶店のモーニングサービスで気分転換している」のだとか。仕事のことも忘れて、ほっとひと息入れる朝のひと時を楽しむ。「健康のことも考えてミニサラダを追加で頼むことが多い」そうだが、最近は喫茶店の価格も上昇傾向。「ミニサラダを追加すると、モーニングサービスでも千円近い支払いに。ちょっとしたプチ贅沢になっていますね」

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