2024年春季総合特集(11)/Topインタビュー/カケンテストセンター/理事長 眞鍋 隆 氏/SDGs対応へ新知見を/6月ベトナムに新試験室開設

2024年04月22日 (月曜日)

 2025年度(26年3月期)が最終の中期経営計画を進行中のカケンテストセンター(カケン)。1年目の23年度は海外が堅調に推移するなど、良好な滑り出しとなった。24年度について眞鍋隆理事長は「コスト高やSDGs(持続可能な開発目標)、海外事業などが課題」とし、それらに一つずつ取り組むことで着実に前進する。

――どのような共創・協働を進めていますか。

 環境や人権を含めたSDGsに対応するには新たな知見が必要であり、カケンとしても共創・協働には前向きに取り組んでいます。信州大学繊維学部や他の検査機関と発足した「繊維産業におけるLCA人材育成コンソーシアム」が一例と言え、環境人材の育成に注力しています。

 産業技術総合研究所が設立した「海洋生分解性プラスチック標準化コンソーシアム」にも参加しています。コンソーシアムは、海洋生分解性を持つプラスチックなどの新素材・代替素材の普及を促進といったイノベーションの推進を目的としています。これらさまざまな共創・協働を行っています。

――カケン内での取り組みは。

 ITエバンジェリストによる取り組みがあります。国内の各事業所から若手職員を数十人募り、ITに関する技術や知識を持つ職員がオンラインで講義を行っています。集合教育だけでなく、教育を受けた人が各事業所に伝えていきます。同時にITを駆使した業務改革も推進しています。

――共創・協働は重要なのでしょうか。

 これまでと変わらない同じ世界で事業を続けるのであれば不要かもしれません。新しい問題や領域に挑戦するには単独では限界があり、共創・協働によってさまざまな知見が得られ、良い解決策が見いだせます。これからも共創・協働は増えていくと考えていますし、進行中のプロジェクトもあります。

――中計の1年目が終了しました。振り返ると。

 完全復調とまでは言えませんが、回復基調にあることは間違いありません。ただし、コストアップが続いていますので、厳しいというのが実情です。比較的海外が堅調で、中国は新型コロナウイルス禍からの反動があり、南アジアと東南アジアも良好です。厳しいながらも全体として中計に沿って進んでおり、良い1年だったと考えています。

――24年度が始まりました。基本方針は。

 今年度は、大きく三つの課題があると認識しています。

 一つはコスト高への対応です。デジタル技術で企業を変革するDXによるコスト削減に徹底的に取り組みます。自助努力の範囲を超える分に関しては価格転嫁の検討も必要ですが、自分たちの効率化が第一だと思っています。

 二つ目が環境対応です。23年にサステイナビリティー推進のために立ち上げた組織をサステナビリティ経営推進部へと発展し、人員にも厚みを持たせました。人権デューデリジェンスを含め、CSR監査やLCA(ライフサイクルアセスメント)のさらなる対応強化を図ります。三つ目の課題が海外事業です。

――海外ではベトナムに子会社を設立します。

 カケンがベトナムに進出したのが05年で、コロナ禍などを除けば順調に成長を遂げてきました。さらなる成長を図るため決めたのが新試験室の開設です。

 6月に開所する予定で、堅ろう度や混用率といった一般試験に加え、機能性試験も実施します。将来は中国の上海科懇検験服務と同じぐらいの規模に拡大したいと考えています。

 ベトナムの新試験室に加え、インドやインドネシアの成長にも期待しています。カケンの強みは、中国のほか、タイやバングラデシュなどにも拠点を設けていることです。生産地を分散化する流れが強くなる中、スポット的ではなく、ネットワークを駆使した面対応が可能です。

――日本国内はどうですか。

 抗ウイルスや抗菌を中心に非繊維関連からのニーズも増えていますので、確実に需要を取り込みたいと思います。その一環としてさまざまな展示会の視察や出展を検討しています。

〈最近のプチ贅沢/繊維製品を眺めるひと時〉

 「繊維に関連する製品を目にしている時間が贅沢なひと時」と話す眞鍋さん。もともと古着や古靴などを集めるのが好きで、「例えば古靴を磨きつつ眺めていると職人の思いや歴史を感じることができる」のだと言う。古着・古靴だけでなく、マフラーもたくさん持っていて「繊維関連製品は自分にとって嗜好(しこう)品の一つになっているかもしれない」と笑う。理事長室には柿渋染めののれんが掛かっているのだとか。

【略歴】

 まなべ・たかし 1980年4月通商産業省(現経済産業省)入省。2003年経産省製造産業局化学課長、10年全国中小企業団体中央会専務理事、16年タクマ常務執行役員、21年中東協力センター代表理事・専務理事、23年6月カケン非常勤理事などを経て、23年10月にカケン理事長に就任