繊維ニュース

“タイパ”志向追い風に/広がる美容系寝具/睡眠時間を有効活用

2024年04月18日 (木曜日)

 “美容系寝具”が増えてきた。肌や髪に優しい生地・設計の商品で、睡眠時間を美容に有効活用。昨今の“タイパ”志向も追い風となる。異業種からの参入が見られる半面、寝具製造卸は新たな販路開拓にもつなげる。

(岡崎直子)

 そもそも美肌・美髪は、良質な睡眠によって得られることが知られている。睡眠中に分泌される成長ホルモンや睡眠ホルモンのメラトニンが、日中に受けた紫外線などのダメージを修復する。

 ただ、何かと忙しい現代では十分な睡眠が得られにくい人も多い。美容にも、限られた時間で最大限の効果・満足度を求めるタイパ(タイムパフォーマンスの略)重視の傾向が見られる。時短のスキンケア用品、一つで複数の美容効果が得られるものなどが人気だ。

 そうした中、nishikawaは2020年、多忙な女性に向け“美容睡眠”をコンセプトにしたブランド「ニューミン」を発売した。枕や肌質に合った枕カバー、吸水速乾性の高いタオルなどを展開。枕は頬が当たる部分にくぼみを設けた。シミやしわの原因とされる頬への圧力を、一般的な枕に比べ約50%軽減。好調な売れ行きを見せる。

 美容液成分のビタミンE(潤いをもたらす酢酸トコフェロール)を繊維に練り込んだ生地を用いた「コスメティックスシリーズ」は、布製品でありながら医薬医療機器等法の「化粧品」として届出。肌が触れると摩擦や体温に反応してビタミンEが放出され、肌の角層まで浸透する。コスメの電子商取引(EC)サイトでも人気となり、新規販路開拓にも一役買う。

 昨夏発売の枕カバー、掛けふとんカバー、フェースライン(襟元)カバーに続き、今春は3種類のパジャマとタオルを投入。パジャマは、寝返りしやすい設計で手の甲まで覆うタイプもあり、全身を保湿する。24秋冬にはビタミンE以外の商品群も展開予定だ。

 昭和西川は24秋冬企画で、シルク使いの新ブランド「シェール・ソワ」を打ち出した。シルクの吸放湿性や保湿効果に着目し、掛けふとん、ブランケット、パジャマ、アイマスク、ウエストウオーマーなど幅広く品ぞろえ。洗えるシルクやシルク混でメンテナンスも容易にし、気軽に使えるようにしている。

 枕製造小売りのまくら(千葉県柏市)と、クッションや枕などを製造販売するMOGU(兵庫県三木市)は5日、協働開発商品「MOGU気持ちのいい抱きまくら スキンケア」を発売した。人気のパウダービーズ抱き枕につばきオイル加工を施し、髪や肌に優しい抱き枕として提案している。

 マッシュスタイルラボは昨夏、ルームウエアブランド「ジェラートピケ」の寝具ライン「ジェラートピケスリープ」から、帝人フロンティアの着用する化粧品「ラフィナン」を用いたヘアキャップと枕カバーを発売。ラフィナンは弱酸性の美容成分が配合されており、髪に潤いを与え健やかに保つ。ラフィナンを用いた既存のルームウエアと合わせ、訴求力を高めた。

 多様なシルク製品を展開するユノキ(東京都新宿区)は、ECで50万人への販売実績があるシルクの寝具ブランド「Utukky」の卸売りに乗り出した。“寝ながらヘアケア”を掲げる枕カバーやナイトキャップなど3商品の拡販を図る。

 サプリや化粧品の開発を手掛けるウェルヴィーナス(東京都渋谷区)は、特殊形状で首や頸椎(けいつい)をサポートし保湿性に富んだ低反発枕「ネムヒール」を開発。睡眠の観点から、サプリ・化粧品以外の商品開発にも力を入れる。