紡績の 開発最前線24 未来につなぐ新たな繊維(下)大和紡績
2024年04月18日 (木曜日)
合繊並み高機能な綿100%
最近は吸水速乾など機能性の面から合繊使いのインナーが増えている。ただ、天然素材が持つ肌触りを好む人や、アレルギー体質から天然素材を使ったものしか着用できないという人もおり、綿100%に対するニーズは根強い。環境配慮への意識の高まりで、廃棄しても土に返るという面からも綿使いはまだまだ需要が見込まれる。
そんな傾向を受けて大和紡績が開発したのが、綿100%でありながらも合繊並みの速乾性を持つ「ミラクルドライ」だ。特殊紡績と加工技術(特許申請中)によって「乾きにくいという綿100%素材の弱点を克服」した素材となる。
通常のリング紡績ではなく、綿の吸水性を高める特殊な紡績法を採用。前処理し高温高圧化で精練漂白した後、樹脂加工によって綿を疎水化することで吸水速乾性を高めた。以前開発した防汚・吸水速乾性を持つ素材「エコリリース」の技術を応用した。
綿100%の21番手糸を使った天竺による試験では吸水性は5秒以下。拡散性残留水分率試験(残留水分率が10%以下になるまでの時間を評価する試験)では、セルロース系繊維が基準で75分以内、合繊が55分以内に対し、44・1分と優れた速乾性を発揮。洗濯30回後の生地でも46・1分と高い速乾性を示す。同じ厚みの綿素材なら、約3分の2の時間で乾くイメージとなる。
抗ピリング性は4級以上で、洗濯を繰り返しても毛羽立ちが抑えられ、外観変化も少なく、「奇麗な外観を維持できる」。
スポーツやカジュアル、インナーなどへ提案。スポーツテイストのタウンウエアやユニフォームなどにも使える。2、3月に東京で開催した「2024春 サステナブル&機能素材展」でも好評で、アパレルの25、26春夏企画に向けて採用が進む。中国やインドネシアから縫製品まで一貫して供給することも可能。抗菌防臭など新たな機能を付与した素材開発も進む。
同社ではナイロン使いの新素材も拡充。最近では異形断面で接触冷感性のあるナイロン長繊維を使用した「クールデプロ」や、ナイロンを綿で包んだ2層構造糸「ツインレットN」も打ち出した。いずれもGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)認証を取得した再生ナイロンを使い環境配慮に対応する。
特に売れ筋となりつつあるツインレットは通常、リサイクルポリエステルを芯に使う。伸度のあるナイロンを芯に使うのは紡績では難しく、調整に苦労したと言う。柔らかく、かさ高性のある生地に仕上がり、風合いも良くなることから強みとするメンズだけでなく、スポーツやレディースなど新たな販路開拓の切り札にする。(おわり)