大手アパレル通期決算 コロナ後の需要で明暗

2024年04月18日 (木曜日)

 大手アパレルの通期決算が出そろった。アフターコロナ下の外出需要やリベンジ消費が一巡し、業績で明暗が分かれた。守勢から攻勢へ転じたオンワードホールディングス(HD)は純利益で前期比2・2倍、三陽商会は2期連続で営業黒字となった。

顧客が実店舗に戻ったことで、OMO(オンラインとオフラインの融合)型店舗の導入も進んだ。

 オンワードHDは、基幹ブランド「23区」が前期比15・5%増、機能美を訴求した新規ブランド「アンフィーロ」も前期比1・9倍の売上高に達するなどアパレル事業が好調。グローバルな事業構造改革もほぼ完了し、投資を成長戦略へ振り向けた。

 OMOサービス「クリック&トライ」の導入店舗は前期末から57店舗増加し計397店舗、導入率は58%に拡大した。OMOサービスと併せたブランド複合型店舗「オンワード・クローゼットセレクト」の拡大も増収に寄与している。

 ワールドは、決算期を3月31日から2月末に変更し、11カ月の変則決算となるため対前年の増減率を発表していない。その一方で、鈴木信輝社長は「売上収益、コア営業利益ともに計画を上回った」と説明する。また、既存店売上高は24年2月度まで24カ月連続で前年同月比を上回っているなど堅調だった。

 TSIホールディングスはコロナ特需が一巡し、同社の強みであるゴルフやストリートブランドは一部で低調。基幹ブランド「パーリーゲイツ」は需要を見誤り「新規商品で計画割れ」(下地毅社長)となった。今期(25年2月期)から構造改革を進め、不採算店舗の統廃合や30を超える各ブランドの電子商取引(EC)サイトを集約するなど、効率化と収益性の改善を急ぐ。

 三陽商会は、人流の回復やインバウンド需要の拡大が寄与した一方、暖冬の影響で「売上高は計画から1・5億円の未達となった」(大江伸治社長)と話す。2期連続で営業黒字となったほか、平均売価は10%上昇し円安や素材調達コストを吸収。重衣料を軸に価格転嫁が進んだ。チャネル別の売り上げ構成比は主力の百貨店が65%で、EC・通販は13%となった。

 バロックジャパンリミテッドは、国内事業が堅調だった。中国企業のベル・インターナショナルと合弁で展開する中国事業は増収、米国事業は個人消費の減退で減収となった。中国事業の損失縮小により、純利益は大幅に増加している。景気減速の影響が出ている中国事業は出店エリアを再編した。さらに中国向けの専用品番を増やす。

 ルックホールディングスは、主力の革製品ブランド「イルビゾンテ」、ライフスタイルブランド「マリメッコ」、フランス発のファッションブランド「アーペーセー」が堅調に推移した。一方で、売上高の大きい韓国市場はセール販売の増加で売上総利益率が低下、営業利益を引き下げた。子会社アイディールック(韓国)の売上高は291億円で、前期に続き日本市場の売上高(237億円)を上回っている。