シキボウ/今期は持続的成長へ基盤固め/海外への市場開拓加速

2024年04月17日 (水曜日)

 シキボウの尻家正博社長は、今期(2025年3月期)が3カ年の中期経営計画の最終年度に当たり、「新型コロナウイルス禍で落ち込んだ3年間を元に戻すというよりも、将来に向けて持続的に成長できる基盤固めの年になる」と話す。繊維、産業材の両セグメントで海外への市場開拓を加速し、中計達成に向けて全力を尽くす。

 前期(24年3月期)は、円安に加え、原燃料高が続き厳しい1年だったものの、昨年9月に発表した通期業績の下方修正の予想におおむね沿った形での数値を見込む。繊維部門は、ユニフォームの価格転嫁が進み、中東民族衣装向け生地輸出が堅調だったことで利益面の改善が進んだ。今期は中計の最終年度となり、特に全社売上高で現状10%台を占める海外向けをさらに拡大する。

 繊維部門では1月にシキボウベトナムを設立し、「東南アジアでの販売、製造拠点が整った」(尻家社長)。ベトナムでは日本向けに製品ビジネスを拡大しているが、欧米や東南アジアなど第三国輸出も想定。拠点を通じた内販にも取り組み、インドネシアの紡織加工会社のメルテックスでは資材やスクールシャツで現地向けの販路も広げる。

 産業資材部門のカンバス事業でも、段ボール製造向けのコルゲーターベルトで海外市場の開拓に力を入れる。国内では綿ベルトが主流となっているが、海外ではニードルベルトが主流になりつつある。基布の繊維層を特殊針でニードリングし、織り目のない平滑な表面を実現した「Nドライ」への置き換えを図る。

 設備投資ではリネンサプライ事業を担うシキボウリネン(和歌山県上富田町)の岩出第一事業所(同岩出市)の新工場建設が昨年12月に完了し、本格稼働を始めている。「大阪・関西万博やインバウンドの需要拡大に十分対応できるキャパシティーになっている」と言う。

 今期も円安に加え、5月から政府の補助金終了で電気料金上昇の可能性が高まるなど、依然としてさまざまなコストアップによる厳しい環境が続く。しかし、尻家社長は「定性的な動きはしっかり中計に沿ったものとなっており、各部門の戦略や方針はずれていない」と話し、中計達成にできるだけ近づける。