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三陽商会/攻めの百貨店シフト/自社ECとの連動も

2024年04月16日 (火曜日)

 三陽商会の大江伸治社長は12日、業績が好調な百貨店販路を強化する方針を示した。今期(2025年2月期)は9店舗の新規出店と30店舗の改装を計画するほか、人員効率や生産性向上を期待できるブランド複合型店舗「サンヨー・スタイルストア」も増やす。売上構成比の6割以上を占める百貨店販路を「攻めるべきチャネル」と位置付けた。

 前期(24年2月期)の百貨店販路は「店舗効率が向上し、採算性も改善した」と話す。相対的に百貨店の売上構成比を下げているアパレル企業が多い中で「むしろ都心では百貨店のプレゼンスが上がっている。若い消費者をつかみ、ニューリッチ層(共働きのパワーカップルなど)が来店している」と話す。

 商品のグレードアップやプロモーションの強化で主力とするアッパーミドル層に加え、富裕層やニューリッチ層との接点を増やす。さらに同販路で顕在化してきた高級志向に即応する。

 昨年9月に刷新した自社の電子商取引(EC)サイト「サンヨー・オンラインストア」では、平均注文単価や販売スタッフのコンテンツを経由した売り上げが増加。ブランドごとに点在していたサイトとECサイトを統合し、さらに公式アプリとの連動も進めた。

 OMO(オンラインとオフラインの融合)サービスも実装し、EC上の商品を取り寄せて試着、販売するサービスを開始。実店舗との相互送客を推進している。加えて、EC専用商材も拡充する。

 大江社長は「(どちらかに偏るのではなく)ECと実店舗の相互補完体制を確立する。ECは改装効果の刈り取りに入る」とした。その一方、タイムセールやクーポンの配布など、値引き販売の傾向が強い外部ECとの取引は抑制する。

〈純利益29%増/24年2月期〉

 三陽商会の2024年2月期連結決算は、売上高613億円(前期比5・3%増)、営業利益30億4700万円(36・3%増)、経常利益31億8400万円(30・7%増)、純利益27億8700万円(29・3%増)の増収増益となった。

 人流の回復やインバウンド需要の拡大が寄与した一方、暖冬の影響で「売上高は計画から1・5億円の未達だった。一方で在庫削減や販管費のコントロールが進んだ」(大江社長)と説明する。プロパー販売比率は1ポイント改善し、66%となった。

 2期連続で営業黒字だったほか、平均売価は10%上昇し円安や素材調達コストを吸収。価格転嫁が進んだ。気温や実需に即したアイテム投入や「商品力が評価されている」と自信を示す。チャネル別の売り上げ構成比は、主力の百貨店が65%で、EC・通販は13%となった。

 実店舗(百貨店、直営店、アウトレット)の売上高は6%増と堅調だったが、ECは昨年9月のリニューアルに伴う稼働停止の影響で1%減となっている。

 今期は、売上高625億円、営業利益33億円、経常利益34億円、純利益31億円を見込む。積極的な新規出店に加え、インバウンド需要の拡大やECサイトの改装効果により11億円強の増収を計画する。