大和紡績 持続的成長で企業価値向上
2024年04月12日 (金曜日)
大和紡績は10日、大阪市内で社員を対象とした経営方針発表会を開いた。有地邦彦社長は「持続的に成長をしていくために、アスパラントグループがエンジンになり、IPO(新規株式上場)を一緒に目指しながら、どうやって企業価値を上げていくかに取り組む」と話した。
価値向上のための投資を加速していく可能性にも触れた。
同社は旧大和紡績(現ダイワボウホールディングス〈HD〉)が2006年に純粋持株会社体制へ移行し、09年にダイワボウ情報システムとの経営統合を機に、繊維事業を統括する中間持株会社(20年に事業持株会社へ移行)として設立した。3月27日にダイワボウHDが保有する同社の発行済み株式の85%を、事業投資会社アスパラントグループ(東京都港区)の特別目的会社へ91億8千万円で譲渡されたことで、ダイワボウHDグループから独立。“第三の創業”に一歩踏み出すことになる。
ダイワボウHD連結時では売上高、利益の9割がITインフラ流通事業を占め、繊維事業の比率は低かった。ROI(投資利益率)などによって設備投資が制約され、「思い切って設備投資をしないと新しいものもできない」(有地社長)という観点から独立に至った背景がある。
日々の生活を支える合繊やレーヨンといった原料、衣料から産業資材まで幅広く展開する強みを「さらに追求できる」体制が整った。資金を確保しており「しっかり投資をしたい」として、さまざまな案件を検討する。
アスパラントグループによるファンドとしての企業価値の上げ方と、大和紡績の技術や投資計画をうまく融合させ「徹底的に企業価値を上げていく」ことで、数年後のIPOを見据える。
アスパラントグループは12年に創業し、これまで26社に投資実績があり、投資先の約半数が製造業となる。同社の物部哲郎社長COOは大和紡績への投資について、レーヨンをはじめ繊維産業で競合企業が少なくなる中で「しっかりと残ってきた理由がある」と指摘。最終ユーザーが製品の品質を決定づける上で「大和紡績でなければできないという付加価値を感じている」という点を評価する。
展開事業の総合的なバランスに加え、社会に必要性の高いものを生産していることも「企業価値として魅力がある」(物部社長)。それらを支えてきたのは従業員であり、「これまで積み上げてきた技術やノウハウを持っており、人材を何よりも大切にしないといけない」と強調。繊維産業は厳しい環境にあるが、その中でも「光り輝いて、未来永劫存在し続ける」企業へ成長することを期待する。
経営方針発表会の後、懇親会が開かれ、約200人が参加。社員が考えた次期中期経営計画のキャッチコピーが発表されるなど交流を深めた。