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在任10年、一番の思い出はコロナ/クラボウ・藤田社長

2024年04月02日 (火曜日)

 「今から思うと厳しかったが、いい思い出もあった」――3月26日に化成品事業部産業資材部長の西垣伸二取締役兼常務執行役員が次期社長に内定したと発表したクラボウ(一部既報)。藤田晴哉社長は会長に就任する(就任はそれぞれ6月に予定)。2014年6月から10年間、社長として陣頭に立ってきた藤田氏は、印象に残った出来事として新型コロナウイルス禍を挙げた。

 20年の年初に日本でコロナの感染者が増え始め、従業員の安心、安全を守る一方で、事業活動も進めなければいけない中、さまざまな対応に追われた。行動制限で営業活動もあまりできず「どういう風に企業運営すればよいか悩んだ」。

 感染対策のガイドラインを作り、常にリアルタイムで感染の情報を把握しながら「決算も含めて乗り越えていった」。厳しかったが、コロナによって「一歩、会社というものが、工場も含めて強くなった」と振り返った。

 社長就任時の業績は営業利益で見ると、不動産事業が繊維をはじめ他の事業をカバーするような形で、「いわゆる世間から不動産会社かと言われる時代」だった。しかし、半導体製造向けを中心に非繊維を拡大、結果的に今は化成品事業と環境メカトロニクス事業を中心に利益を伸ばし、21、22年度には2期連続で過去最高の経常利益を達成。「大きくポートフォリオを変えていくことができた」

 「できなかったことはいっぱいある」として、中でも「売り上げを拡大することは0点に近い」。また、非繊維事業での海外拠点の拡大にも課題を残した。

 社内でチャレンジ精神を活性化するため、18年の創業130周年を機に「面白いこと やってやろう。」というメッセージを出しながら意識改革にも取り組んだ。ただ、全体に「定着するまで時間がかかる」として、次期社長の西垣氏に「次の作戦を考えていってもらえれば」と後事を託す。