ジーンズ別冊(4)/デニム関連有力企業トップに聞く/今後の成長の鍵は
2024年03月29日 (金曜日)
新型コロナウイルス禍による行動制限が緩和され、国内ではインバウンドも回復するなど消費活動が活発化してきた。その一方で円安基調の継続や、さまざまなコスト上昇など、業界全体で厳しい環境は継続する。今後の成長の鍵は何なのか。デニムメーカーや洗い加工場、ジーンズメーカー、商品プロデューサーなど、ジーンズ業界内の有力企業トップへ、商況や事業展望などについて聞いた。
〈カイハラ 執行役員 営業本部長 営業部長 稲垣 博章 氏/実績へつなげる年に〉
昨年は新型コロナウイルス感染症の法律上の位置付けが5類に移行するなど、規制が緩んで通常の営業活動が復活してきた年でした。当社でも海外出張を昨年1月から復活させるなど、昨年はとにかく次の芽を作るための種をまく活動をしてきました。これにより、成果につながりそうな案件も出てきています。
米国を中心とした輸出では、既存の顧客のリピート数が上がってきています。国内向けでは、ジーンズカジュアル以外の顧客が底上げしてきています。ただ、一部では多品種小ロット生産によってコスト要因になってきているのも事実です。
今期(2025年2月期)は、この1年やってきたことをさらに推し進め、実績につなげていく年にしていきます。
デニムは色落ちなど、ストーリーを語ることのできる商品ですが、こだわりが強すぎるあまり、市場を狭めているのではと感じています。コロナ禍で生活様式も変わる中、一度ゼロベースで考えて新しい市場を作っていくことが必要です。当社では、従来とは違った異業種向けの開拓を進めており、一部では今後それがそれなりの商売になってきそうです。
輸出においては、開拓先を中国や韓国、欧州などの国へ広げており、未開拓のブランドへのアプローチも進めています。国際的なオーガニックテキスタイルの認証である「GOTS」などを強みに、販路を開拓していければ。
昨年10月には当社としては初の単独展を東京オフィス(渋谷区)で開きました。パートナーシップを結んでいるレンチングの素材を使ったデニムなどを展示し、来場者に喜んでもらえました。展示会は状況を見ながら、今後も年に1~2回はやっていきたいです。
〈フーヴァル 社長 石橋 秀次 氏/12月期売上高は初の10億円超〉
2023年12月期は売上高が10億2千万円(22年12月期売上高は8億9千万円)と増収となりました。売上高が10億円を超えるのは07年の創業以来初めてのことです。デニムのトレンドもあり、受注を堅調に獲得できました。さらに、小口の受注にもしっかり対応したことなども奏功しました。加工では、古着風のユーズド加工が引き続き多い傾向にあります。
水や薬剤をナノバブル状態にして加工するスペインのジーノロジア社製の設備「eフロー」の導入や、縫製拠点の「フーヴァルベース」を新たに設けるなど、新型コロナウイルス禍が本格化する前に進めた設備投資も現在の仕事につながっています。新型コロナウイルス禍に突入してからは投資が失敗したと思いましたが、今になってみるとあの時に手を打っておいて良かったと思っています。
今期は人員を確保しながら、縫製能力の強化に重点を置きます。フーヴァルベースは、ほぼ素人で始めた工場でしたが、技術力が上がってきており、取引先から「縫製が奇麗」と評価されるまでになりました。
ここで縫いたいというオファーは多いものの、人手などの問題もあり、キャパシティーがいっぱいの状況が続いています。そこで、6月に外国人技能実習生を4人採用して生産能力を増強します。今後3年かけて外国人技能実習生を12、13人まで増やしたい。現在の月産能力1千点を3千点にまで引き上げたいですね。
この3年は加工に力を入れてきており、受注量は思ったように伸びてきています。本社工場も手狭になってきたことから、近隣で良い物件があれば、擦りの工程部分のみ外部に移設することも視野に入れています。
〈篠原テキスタイル 社長 篠原 由起 氏/海外販路の開拓継続〉
2024年3月期の売上高は前期比微増か横ばいの見通しです。受託生産、自販ともに堅調に推移しています。5年ほど前は売り上げの5割だった自販の割合は現在、7割にまで高まりました。受注が堅調だった一方、糸値など原材料費や電気代などのコスト上昇が続いており、利益面は苦戦を強いられました。
来期以降も引き続き、海外販路の開拓に力を入れていきます。
1月30日から2月1日まで、イタリア・ミラノで開かれた国際的な生地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)に出展し、独自性の高い生地を多数出展してアピールしました。そのうちの一つがウガンダ産のオーガニックコットンとオーガニックコットンの落ちわたをミックスした糸を使って織ったデニムです。13オンスで、ビンテージ感のある生地感が特徴です。また、当社が得意とするテンセルデニムなども発信しました。
MUでは、一目で日本ぽさが分かる、和テイストの2次加工を施した生地など、加工ものの打ち出しも増やしました。中でも柿渋染めデニムはピックアップが多かったですね。
海外展へ出展する中で課題も見えてきました。その一つが認証です。オーガニックテキスタイルの国際的な認証「GOTS」など、生産工程における認証について聞かれることが、昨年から今年にかけて圧倒的に増えました。認証が絶対必要というブランドも中にはあり、そのような認証がないと話にもならないことがありました。当社でも今後は工場内の空調設備の見直しなど生産現場の環境整備を進めつつ、認証取得についても考えていかなければなりません。
〈タカヤ商事 社長 落合 豊 氏/3カ年で売上高10億円アップを〉
2024年2月期の売上高は、前の期と横ばいの60億円となりました。ジーンズの販売では、卸売りが苦戦しましたが、百貨店での販売が好調に推移しました。レディースカジュアルブランドの「RNA」事業は、インバウンド客が増えたことに加え、客単価が上がったことから前の期並みの売上高を維持できました。1年前は1万5千~1万6千円だった客単価が今は2万円超になっています。ただ、客数は減少しているため、今後どう商売をしていくか考えていく必要があります。
ワークウエアでは、ショップ向けが苦戦する一方、企業納入向けが堅調で、売り上げの落ち込みをカバーしました。OEMはアッパーゾーンのブランド向けが好調で、ボリュームゾーン向けも前期に比べると回復基調になってきています。
今期(25年2月期)から3カ年の経営計画を始動します。「ジーンズ・RNA事業部」では、ジーンズ部門で百貨店を中心に販売を強化していきます。RNA部門では出店を進め、3年間で11店舗を出店していく計画です。まずは今月、パルコヤ上野(東京都台東区)、ルクアイーレ(大阪市北区)、アミュプラザ博多(福岡市)に出店しました。
「ワークウェア・OEM事業部」では、ワークウェア部門で現状販売が弱い大阪で攻勢をかけます。今年に人員を拡充して営業体制を強化します。OEMは、好調なホームセンター向けの仕事をさらに伸ばします。バイク用品関連など、従来とは違った業種向けの仕事も増えつつあり、アッパーゾーンのブランド向けの開拓も進めていきます。
これらの施策に取り組みながら、3カ年で売上高10億円アップを目指します。
〈コダマコーポレーション 社長 畠山 直秀 氏/今期売上高30億円視野に〉
上半期(2023年8月~24年1月)は、営業による開拓に加え、細やかな対応、そして既存顧客との取引でも新しい部門での商売につながったことなどが奏功し、増収を確保できました。製品を見ると、スラックス系やチノなど、ベーシックなアイテムが伸びています。
上半期の売上高は前年同期に比べて1億5千万円伸びました。今期に計画している売上高30億円(前期売上高27億2千万円)も見えてきました。一方で利益面は為替次第でしょう。
生産面では、中国から東南アジア諸国などへの生産地シフトを進めています。中国以外の国ではカンボジアのほか、ミャンマー、バングラデシュ、インドでも生産しています。量産品は東南アジア諸国、小ロットなどは中国といったように使い分けて生産しています。
当社は20年に基幹システムをクラウド化しましたが、その活用が広がってきました。外部でもリアルタイムで売り上げ情報を確認できるなど、利便性も向上してきました。出荷場のスタッフは全員タブレット端末を持っており、活用も手慣れてきました。クラウドの活用においては日々の積み重ねが重要。今後はクラウドでの応用的な使い方も進めながら、さらなる効率化につなげていきます。
下半期に向け、引き続き開拓を進めながら売り上げにつなげていきます。GMSなど、取引先に選ばれる会社にならなければなりません。
現在は取引先の店頭販売が鈍化し、春物が入っていかないという悪循環によって、想定以上に在庫が膨らんでいます。そのような中でも、「ヘインズ」など知名度のあるブランドを武器に開拓を進めていきます。
〈ドミンゴ 統括本部 本部長 三谷 慎哉 氏/主力レディースブランド再構築〉
2024年3月期の売上高は前期比横ばい、もしくは微減を見込んでいます。岡山、大阪、京都に持つ直営店などでの直販が健闘した一方、卸売りは苦戦を強いられました。特に暖冬の影響で、卸先が冬物の防寒衣料を抱えて四苦八苦されています。冬物が売れないので、卸先はなかなか仕入れができないといった状況です。
当社の展開するブランドでは、ワークテイストの「OMNIGOD」(オムニゴッド)の販売が堅調に推移しています。同ブランドでは現在、韓国や上海、タイなど海外へ少しずつですが攻めていっています。米ニューヨークのファッションブランド「Alex Mill」(アレックスミル)とのダブルネームによる商品の展開といった海外ブランドとのコラボレーションも行うなど、今後も海外向けの販売を着実に伸ばしていきます。
レディースブランドの「Brocante」(ブロカント)の販売も健闘しています。同ブランドの商品はナチュラルでゆったりとしたシルエットが特徴です。客層を絞り込んだブランドでもありますが、販売が広がってきています。
一方、主力のレディースブランド「D.M.G.」は販売が鈍化しています。同ブランドはデニム、ワーク、ミリタリーなど、メンズライクな要素をレディースに落とし込んだデザインの商品をそろえています。値頃感があり、卸売りを中心に展開していました。
ブランドを企画も含めて見直しながらもう一度再構築し、直営店で売れる商品作りをしていきます。デニムアイテムやチノパンツなど、ベーシックなアイテムを再構築しながら、もう一格、二格上のアイテムも組んでいきます。
〈バロックジャパンリミテッド MOUSSY事業部MOUSSY VINTAGEグループグループ長 呉山 将麻 氏/米国好調、中韓にも進出〉
米国や欧州市場で販売する日本製ジーンズ「マウジー・ヴィンテージ」が好調です。インフレ傾向が強かった米国でも売り上げは堅調でした。米国での取引先アカウント(口座)は250件になりました。今後は中国や韓国にも取引先を増やす計画です。
米国ではサックス・フィフス・アベニュー、ノードストローム、バーグドルフ・グッドマンといった高級百貨店が主要卸先で、直近では有力セレクトショップの開拓も進みました。売れ筋ジーンズの平均価格は370~380ドルと高額ですが、日本製のデニム生地や繊細な後加工が評価されています。
円安や原材料の高騰はマイナスインパクトですが、影響は軽微。生地を共同開発するカイハラ(広島県福山市)や、加工を担当する豊和(岡山県倉敷市)、サーブ(神奈川県平塚市)との連携を強め、日本製のプライドを海外で訴求しています。
米国や欧州では日本発のモノ作り、プレミアム感を発信しています。23秋冬シーズンはワイドシルエットとスリムストレート、スーパーワイドが高稼働し、24春夏はハイライズからミッドライズの仕様へ移行。一部ではローライズも採用します。
今後は中国、韓国市場にもマウジー・ヴィンテージを展開します。中国は卸事業でセレクトショップ、高級百貨店に展開するほか、2月下旬には韓国で展示会を実施しました。韓国のジーンズ需要をリサーチしたほか、韓国市場に進出した当社の婦人服ブランド「エンフォルド」の取引先にもサンプルを見せました。国産ジーンズを産業として発展させたい。ジーンズを一過性のトレンドではなく、継続して商品開発に取り組みます。
〈ドクターデニムホンザワ 代表 本澤 裕治 氏/市場にないもの作る〉
レディースジーンズの売れ筋は、圧倒的に綿100%のワイドシルエットです。以前はストレッチの効いた細いシルエットが人気でしたが、今はとにかく太くないと売れません。私が監修するブランド「レッドカード・トーキョー」なども幅広が支持を得ています。色は濃い黒や青から、薄い青がトレンドです。
市場は、国内外のカジュアル衣料品大手が販売する1万円以下のジーンズが席巻しています。品質も良いです。ここと戦うよりも、市場にない商品や価値を提案しマーケットを作り出していく方が得策です。
新しい商品をプロデュースするに当たり、25春夏を見据えて1月から市場調査などを行い動いています。メンズに狙いを定めています。トレンドが明確なレディースより、新しい価値を提案しやすいからです。ベーシックな商品を作るつもりはありません。市場にないもので勝負します。1万5千円~2万円を切る価格帯を想定して、商品企画と売り方の検討を同時並行で進めています。
黒や青のジーンズは市場にあふれかえり、競合も多い。その中でどんな商品を打ち出すかを考えたとき、デニム以外の素材を使ったノンデニムのパンツの開発も有効な選択肢の一つです。リーバイスでいうと、コーデュロイパンツなどのいわゆる“白タブ”商品群です。
一方で、アジア進出を狙うブランドのコンサルティング事業にも携わっていこうと考えています。ベトナムやタイの市場は伸び代が大きい。特にベトナムは平均年齢が34歳で、日本の48歳と比べると若い国です。所得水準も向上しています。ジーンズ関係の縫製工場も多く、現地にはジーンズショップが急増しています。成長余地が大きく魅力的です。
〈カイタックインターナショナル D&S営業部 執行役員営業部長 秋山 尚之 氏/ジーンズのニーズは意外とある〉
ジーンズブランド「ヤヌーク」の販売が伸びています。
平均価格は2万8千円ほど。商品には基本的にストレッチデニムを採用しています。綿100%のデニムのような、立体感のある加工を施すなど仕上がりにこだわるほか、シルエット、履き心地を重視しています。
新型コロナウイルス禍が収束に向かう中、昨年3月以降、急激に販売が伸びました。特に3、4月は、太めのルーズストレートタイプの「ジョーン」の販売が好調でした。店頭での丁寧な接客対応も寄与しています。どんなジーンズをはいたら良いか分からない人が多いだけで、ジーンズのニーズは意外とあるのではないでしょうか。
商品はカイタックグループの総社カイタックファクトリー(岡山県総社市)で生産しています。この強みを生かし、品切れといった機会損失の低減につなげることができたほか、売れる時には追加生産をするといった対応ができたことも大きかったですね。
SNSでの発信も販売につながっています。社員がインスタグラムやユーチューブで着こなしなどを地道に発信して、ファンを獲得しています。さらに著名人が着用してくれるケースもあり、相乗効果となっています。
10年前の客層は40~50代が中心でした。今は30代が一番多く、その次は20代になりました。
今後も直販を軸に販売を進めていきます。2019年当時は売り上げの99%が卸でしたが、現在は直販比率が70%ほどにまで高まっています。
直営店は19年に東京都内へ1号店を開いて以降、コロナ禍でも出店を続けました。今月には兵庫県西宮市、千葉県柏市、金沢市にも新店舗をオープンし、現在は18店舗を運営しています。
〈コイズミクロージング 社長 太田 治之 氏/豊富な生産・調達背景生かす〉
2023年3月に社長に就いて以降、新型コロナウイルス禍からの「力強い回復」を目標に事業に取り組みました。24年2月期は増収増益の見込みで、特に利益面の改善が進みました。
当社主力商品のレディース衣料販売の回復が目立ったことに加え、メンズ、キッズの各商品の販売も前年を上回りました。特に第1四半期(23年3~5月)はコロナ禍から消費マインドが大きく回復する時期と重なり、好調に推移しました。ただ、それ以降、7月の端境期、11月の冬商戦の立ち上がり時期での停滞感が目立ちました。猛暑、残暑によって消費者の購買動向が実需志向に傾き、当社の既存MDでは対応できなかったことが原因とみています。
今期(25年2月期)以降は年間平均気温を基準にするなど、既存のシーズンMDから脱却し、実需に即した短期MDを推進するなど対策を取ります。各カテゴリーの重点目標としては①Z世代を含む若年層を取り込むための製品企画・感度の若返り②コーディネート提案の充実とそのブランディング③素材開発、生産背景でのSDGs(持続可能な開発目標)の継続と拡大――の3点を強化します。
特にコーディネート提案のブランド化には既存の販路だけでなくネット通販や専門店などへの拡販を続ける上で、受け入れられやすい固有名称、ブランドの確立は不可欠と考えています。
製品の生産・調達体制も現在の中心である中国から、小泉グループが強みを持つインドの比重を増やす計画です。ただし難度の高い縫製や秋冬向け企画は中国の生産・調達にまだ分があります。一方で為替動向などコスト管理はさらに難しくなっており、製品の付加価値、納期、コストなどの要素を鑑みながら適地生産を意識します。
〈サムライ 社長 野上 徹 氏/“綿花畑”は独自の価値〉
2023年後半以降、新型コロナウイルス禍の影響も落ち着き、収益ともにコロナ禍前の水準に回復してきました。北米やアジア圏の見本市への出展やショップとの往来も正常化し、大阪の直営店にも訪日観光客を含む来店者が戻っています。
製品では23年に創業25周年を迎えたことを記念したモデルなどが全般的に好評でジーンズだけでなくTシャツなどのアイテムの購買が目立ちます。
課題は国内のサプライチェーンの維持です。当社はヘビーオンスやセルビッヂなどデニムでの差別化を重視しているほか、それに伴う縫製品質も付加価値としています。コロナ禍からの回復に伴い生産量も増えており、生産キャパシティーの確保が急務となっています。国内産地で外注先の開拓を進めており、サプライチェーン、納期の維持に努めます。
提案面では自社栽培した和綿を一部の製品の原料に用いていることも当社独自の価値として強調したい。
08年から綿花栽培に挑戦し、現在は兵庫県篠山市に東京ドーム3個分の畑を運営する規模になりました。23年も相当量の収穫ができ、製品に用いる量も拡大しています。和綿と比べて繊維長が長い洋綿の栽培も今季から畑の一部で行います。原料を自前で調達できることは差別化だけでなく将来的に安定した原料リソースを確保しておく意義もあると考えています。可能であれば、紡績工程も自社でできないか検討中です。
綿花畑に当社製品のユーザーや地元の方々を招いてのイベントもブランドの周知、確立の一助となっています。コロナ禍で遅れていましたが24年の春をめどに綿花畑でジーンズの縫製や加工などができる施設も開設します。
〈角南被服 社長 角南 博和 氏/人材確保に注力〉
2023年12月期売上高は前期比横ばいでした。外注に委託する比率を引き下げ、23年4月、9月と二度にわたり値上げを実施しましたが、思ったほど利益は伸びませんでした。人材確保の一環として福利厚生を強化したことが影響しています。
24年12月期は、生産ロスを減らし生産性を高めることで売上高5%増を目指します。
他の工場が縫えない23~25オンスのデニムを縫えることが奏功して、暖冬の影響で受注が減少傾向にある三備産地の中でも、半年先まで生産キャパシティーが埋まる安定的な受注を獲得しています。
厚いデニムを縫うために、ミシンの部品を改造しています。強い圧力がかかる針受けを、炭素の含有量が高い合金で作り耐久性を高めました。ロックミシンの糸の輪を作る部品であるルーパーはアルミからステンレス製へ交換しました。ミシンを6台買い換えるなど積極的に設備投資も進めています。
安定的な生産能力を維持するため、人材の確保にも注力しています。これまで中国やベトナムから外国人技能実習生を招いてきましたが、経済発展による給与の上昇や円安の影響で来日を希望する外国人が少なくなってきました。そのため、縫製産業が盛んで人件費が安く、若い世代が多いバングラデシュから実習生を招くため、さまざまな人脈をつてに現地訪問し、人材獲得につなげます。
東京モード学園(新宿区)で授業を実施するなど、学生との接点も増やしています。このほどモード学園からインターンを受け入れるなど実際の採用事例も出てきました。