不織布新書(3)/ユニチカ/フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/東洋紡エムシー/ベリー、グラットフェルター

2024年03月26日 (火曜日)

〈ユニチカ/新規開拓し販売拡大へ/SLで工業資材用途も狙う〉

 ユニチカの不織布事業部は、ポリエステルスパンボンド不織布(SB)と綿スパンレース不織布(SL)ともに新規取引の開拓に力を入れ、販売量の拡大を目指す。

 2023年度(24年3月期)は、自動車向けや土木資材向けのSBが堅調に推移し、建材もコントラクト用途のタイルカーペット向けが好調だったが、戸建て住宅用のルーフィングやハウスラップ向けが低調だった。SLもコスメ用途などでインバウンド需要の回復が遅れ、販売量は減少した。

 このため不織布全体でも生産量が若干減少した。原燃料価格の高止まりや物流費上昇も加わり利益面で苦戦する。22年から5回の値上げを実施しており、今年2月に6回目の値上げに踏み切ることで採算改善に努めている。

 24年度は、まず販売量の回復が重点課題。神ノ門英明不織布事業部長は「SBは新規取引案件が決まりつつある」と、既存取引を維持しながら新規取引の獲得で生産量の拡大に手応えを示す。SLも米国などで新規取引案件の商談が進む。コスメティックや生活資材に加えて、混綿タイプや他素材との積層タイプなどの開発と提案を強化することで工業資材分野での用途開拓に取り組む。

 SB、SLともに需要掘り起こしのために高付加価値品の提案に力を入れる。綿SLに機能を付与した「コットエースプラス」、熱成形可能なポリエステルSB「マリックスAX」、2成分複合SB「エルベス」の芯部分にポリ乳酸(PLA)を使用したタイプ、再生ポリエステルSB「エコミックス」などを打ち出す。

〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/建材で新規商材重点提案/専任担当置き認知度高める〉

 ドイツ・フロイデンベルググループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(大阪市中央区)は、建材用途で新規商材の拡販を進める。

 2023年度(12月期)は値上げ効果が発現したことや高騰していた海上運賃が落ち着きを取り戻したことなどから増収増益で着地した。主力のポリエステルスパンボンド不織布(SB)は、カーペット基布向けが塩ビ製床材との競争激化で勢いがないが、自動車向けが増加。建材向けも屋根防水材が好調だった。ポリエステル・ナイロン複合SB「コルバック」も増収に貢献した。

 ただ、24年度に入って建材に勢いがない。人手不足による工期長期化が建材消費にマイナスの影響を与えている。このため新規商材の拡販で既存商品の落ち込みをカバーする戦略だ。特に屋根防水材向けポリエステルニードルパンチ不織布「ドリップストップ」を積極提案する。専任の営業担当も配置した。また、3次元構造体「エンカ」にも力を入れる。23年から中国生産も始まり、供給能力が高まった。いずれも国内での認知度向上に取り組む。

 資材用途でもサステイナビリティーへの要求が強まっている。これに対してカーペット基布向けに再生ポリエステル100%SBも用意しており、ニーズに応える体制が整う。

〈東洋紡エムシー/海外販売に注力/東洋紡と三菱商事のシナジーで〉

 東洋紡エムシーは、ポリエステルスパンボンド不織布(SB)の海外販売拡大と新規用途開拓に力を入れる。東洋紡と三菱商事の合弁会社としてのシナジーを発揮する。

 同社のSB販売は売上高の約3分の1を自動車用途が占める。2023年度(24年3月期)は生産台数が回復したことでなどで自動車用途の販売も回復した。一方、建材用途は二極化した。アスファルトルーフィング材などは都市の再開発活発化で堅調だったが、戸建て住宅向けは苦戦する。また、土木資材用途も勢いがない。人手不足や労働規制強化で工期が長期化していることが背景にある。

 海外販売は中国市場で日系自動車メーカーの販売が振るわないため内装材が低迷したが、トノカバーなどは中国の自動車メーカーにも採用されていることで好調。米国では日系自動車メーカーの好調を受けてSBの販売は堅調に推移する。

 このため24年度も引き続き海外販売の拡大に取り組む。従来、自動車用途は日系メーカー向けが中心だったが、「三菱商事との連携で欧州など海外の自動車メーカーへの提案が進んでいる」(西阪剛志スパンボンド営業ユニット長)。トノカバーのような新規用途開発も重視。成形性を高めるなどで短繊維不織布が主流の用途に向けた開発・提案を進める。

 自動車以外の用途開拓にも取り組む。やはり米国で消費財関連用途の新規案件の商談が進行中だ。また、4月には新設備によってSBを機能化する試作も始まる。これを生かした新規用途開発に取り組む。

〈ベリー、グラットフェルター/米国の不織布大手合併へ〉

 米国の不織布メーカー大手が合併する。2024年2月7日、世界最大の不織布メーカーである米国・ベリー・グローバル・グループは不織布・フィルム事業を含む健康・スペシャリティーズ事業の大半を分社化し、世界7位の規模とされる不織布メーカー、グラットフェルターと合併させることで合意したと発表した。新会社は24年後半に設立される見通しという。

 ベリーのケビン・クウィリンスキーCEOは「2社の事業が組み合わさることで、それぞれがより大きな成功を収めることができ、株主にも大きな価値をもたらすことができる」と述べ、グラットフェルターのトーマス・ファーネマンCEOは「事業統合により、一流の不織布サプライヤーと特殊素材のグローバルリーダーが誕生する」と強調した。

 ベリーは旧PGIノンウーブンズの不織布事業を継承しており、スパンボンド不織布(SB)、メルトブロー不織布(MB)、SMS(SBとMBの複合不織布)、エアースルー不織布など各種不織布を製造販売する。

 発表によると、ベリーが分離する事業の売上収益は22億ドル。

 一方、グラットフェルターはエアレイド不織布、湿式不織布メーカーの大手であり、売上収益は14億ドル。

 単純合計で36億ドルと、圧倒的な売上収益を持つ世界ナンバーワンの不織布メーカーとなる。