特集 アジアの繊維産業(7)/帝人フロンティア/充実した生産販売体制生かす
2024年03月21日 (木曜日)
新型コロナウイルス禍が収束に向かい、アジア市場でも生産・販売活動も正常化が進む。一方、中国経済変調の影響もあって、アジアのサプライチェーンの再構成が一段と加速した。帝人フロンティアはASEAN地域に衣料、産業資材など幅広い分野で、合繊糸・わたから織・編み物、染色加工、縫製まで充実した開発・生産・販売体制を持つ。これを生かし、品質、機能、そして環境配慮など顧客と社会のニーズに応えるサプライチェーンの構築に取り組む。
〈TPL、TJT/不織布原綿の能力拡大〉
ポリエステル長・短繊維製造販売のテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)とテイジン〈タイランド〉(TJT)は、能力増強と機能素材の拡販に取り組む。
2023年度は需要家の在庫調整の影響で衣料用、産資用ともに販売に勢いがなかった。衣料、産資ともに市況の回復には時間がかかるとみる。
こうした中、24年度は不織布用短繊維の生産能力拡大と機能素材の販売拡大に注力。衣料用に高付加価値素材の増産と販売拡大を目指す。
資材分野ではゴム資材向けに環境配慮型商材の開発と販売拡大に力を入れる。また、さらなる生産能力増強も検討する。
タイ国内でのプラスチック廃棄物削減への貢献にも取り組む。そのために現在、再生ポリエステル原料をタイ国内の使用済みペットボトルに変更する取り組みを進めている。
〈タイ・ナムシリ・インターテックス/グローバル生産拠点に〉
ポリエステル長繊維織物製造のタイ・ナムシリ・インターテックスは帝人フロンティアのASEAN圏内グローバル生産拠点としての立ち位置を一段と強める取り組みを推進する。
2023年度はASEANでの素材調達ニーズを受けて引き合いが増加したが、前年度後半から続く市況低迷の影響で上半期は苦戦した。下半期での挽回で通期では前年度比増収、利益横ばいで推移した。
24年度も立地を生かしてASEAN地域でのグローバル商権獲得・拡大を目指す。そのために帝人フロンティアの中国生産拠点など海外各拠点と連携し、欧米向け販売も強化する。太陽光発電装置設置など環境配慮型素材のための設備も拡充し、環境配慮型生産拠点化を推進する。
〈テイジンフロンティア〈タイランド〉/新規市場・商流を開発へ〉
テイジンフロンティア〈タイランド〉は新規マーケット、新規サプライチェーンの開発に力を入れる。
2023年度は自動車用途が緩やかに回復したが、資材用途は中国市場の低迷の影響を受け、流通在庫の増加もあって苦戦した。
24年度は、引き続き自動車用途は緩やかに回復し、資材用途も市況が持ち直すとみている。ただ、中国の電気自動車メーカー躍進による日系自動車メーカーの苦戦や、ロシア・ウクライナ紛争と中東の政情悪化による物流混乱など不安材料も多い。
同社は自動車と一般資材など既存事業への依存度が高いため、新規マーケットや新規サプライチェーンの開発に力を入れる。サプライチェーンの連携強化、安定調達・生産による効率化と付加価値品の開発と販売を強化する。タイに貢献できる環境関連ビジネスにも取り組む。
〈テイジンフロンティア〈ベトナム〉/内販、欧米向け強める〉
テイジンフロンティア〈ベトナム〉の2023年度は、ベトナム全体の繊維景況が芳しくない中でも健闘する。新規事業として取り組む人工皮革販売が苦戦したものの主力の対日衣料品縫製が伸びた。
衣料品事業は納期や品質のトラブルもなく順調に推移した。ロックダウン(都市封鎖)を経て新たなサプライチェーンを構築したことで安定化が図られた。次のステップとして、内販拡大と欧米ブランド向けの開拓を急ぐ。
念願のベトナム内販もカジュアル衣料でスタートした。今後さらに拡大させる。欧米向けは横ばいで推移しているが、香港法人とも連携して伸ばす。
衣料品に先行してスタートしている人工皮革販売は市況回復を見越して営業活動を強めるとともに、シューズ地以外の用途開発に力を入れる。
〈テイジン・コード〈タイランド〉/コスト削減と新製品開発〉
ゴム資材向けシングルエンドコード加工のテイジン・コード〈タイランド〉は、コストダウンと新製品開発の取り組みを継続する。
2023年度は前年度から続く自動車用途の苦戦に加えて、期中盤から全用途で市況が低迷した。このため販売量、収益ともに前年度を下回っている。
24年度は全用途とも市況は回復に向かうとみている。ただ、引き続き不安定な市況となることも想定し、さらなる製造・販売コストの削減と新製品開発の取り組みを継続する。
また、急な市況回復にも対応できるようにするため、既存設備の生産能力増強にも取り組んでいく。
〈テイジンFRAタイヤコード〈タイランド〉/市況回復で大幅販売増に〉
タイヤコード製造販売のテイジンFRAタイヤコード〈タイランド〉は今年、設立10周年を迎えた。市況の回復もあり大幅な販売増加を計画する。
2023年度は上半期こそ苦戦したが、下半期から回復し、通期では前期と同等の販売量を確保できる見通しとなった。24年度も現在の受注ペースが継続するとみており、前期比39%増の販売量を計画する。
課題は引き続き品位・品質を維持しながら生産量を増やすことであり、日本からの支援を受けながら各工程の改善活動を推進する。品質管理体制強化と増産のため人員も増えている。コストダウンと作業効率向上のための設備入れ替えの準備も進める。
設立10周年を迎えたことから、10周年セレモニーの開催も検討する。