LIVING-BIZ vol.104(4)/特集 環境/シキボウ/フランスベッド/イワタ

2024年03月19日 (火曜日)

〈生分解性ポリエステル訴求/繊維廃材をアップサイクル/シキボウ〉

 シキボウは寝具寝装向けで、生分解性ポリエステル短繊維「ビオグランデ」や、繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」を活用した提案に力を入れる。

 ビオグランデは、ユニチカトレーディングとの共通ブランド商品。土中だけでなく海水中での生分解性も確認しており、マイクロプラスチックによる海洋汚染の軽減に貢献する。埋め立て環境下では646日で93・7%、海洋では1953日で87・9%の生分解性を確認しており、さらに長い期間での試験を進めている。

 物性面では通常のポリエステルとほぼ変わらないため、従来のポリエステル繊維を代替することも可能。カバーや“側”(中わたを入れる前の半製品)で提案する。

 シキボウグループの新内外綿が取り組む繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」の活用も進める。取引先で不要となった生地や繊維製品を再び糸にする取り組みで、SDGs(持続可能な開発目標)の関連で環境配慮やアップサイクルへの関心が高まる中で、彩生も注目されている。回収したリネンサプライ用シーツを反毛にして糸にし、エコバッグに仕立てるなど取り組みを広げている。

〈法人向けレンタル開始/サステ向上に貢献/フランスベッド〉

 フランスベッドは今年から、法人向け新サービス「フランスベッドレンタル」を始めた。宿泊施設や一般企業に向け、電動ベッド、ベッド型マッサージ器などをレンタルする。宿泊施設の顧客満足度向上・競争力強化、企業の福利厚生拡充をサポートするとともに、資源の有効活用につながるレンタルサービスを促進し、サステイナビリティーの向上に貢献する。

 メディカルサービス事業で培った福祉用具レンタルの知見を、インテリア健康事業に広げた。宿泊施設向けは従来、折り畳み式ベッドのレンタルにとどまっていたが、国内外の旅行客が増加する中、高機能商品のレンタルを通して、高額な初期費用や廃棄処分の心配なく、一格上のホテルステイの実現、新規宿泊客獲得を後押しする。

 商品開発では、環境配慮と持続可能な取り組みを重視したモノ作り思考「エココンフォート」に基づいて推進。製品開発段階から使用後のリサイクルを考慮した素材・設計を重視する。例えば、解体・分別が容易な「モアリーN」仕様のスプリングマットレスは、同社製マットレスの2割を超え、電動ベッド用マットレスにも広がる。今後も商品・サービスの両面でサステを追求していく。

〈地球社会との調和追求/イワタ〉

 寝具製造卸・小売りのイワタ(京都市)は、快適で豊かな暮らしと、地球社会との調和を長く持続させることに貢献する企業活動を追求する。

 同社は、「自然との調和を眠りから実現する」をパーパス(自社の存在意義、社会に対して果たす役割)に掲げる。東洋思想「天人合一」(自然と人はひとつながりという意味)をキーワードに、自然との調和のために2方向からアプローチする。一つは、自然のリズムと同調した良質の睡眠を届けること。もう一つは自然の限界範囲内でのモノ作り。この考えを具現化するために、三つのフィロソフィー「SLEEP(良質な睡眠を提供)」「SAFE(安心かつ安全な品質)」「SUSTAINABILITY(持続可能なモノ作り)」に基づいた企業活動を行う。

 持続可能なモノ作りでは、二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの羽毛ふとんの販売を始めた。これまでも三井物産と博報堂が出資するEarth hacks(東京都渋谷区)が提供する「デカボスコア」(脱炭素化)の認定を受け、無染色・無漂白の生地と羽毛を使用し、再生エネルギー由来の電力使用や定期的なメンテナンスによる製品の長寿命化などで、従来商品に比べてCO2e(CO2相当量に換算した値)を42%(28キロ)削減した羽毛ふとんを販売していたが、排出量削減をさらに追求。環境事業に資金を拠出して対価にクレジットを受け取り自社の温暖化ガス排出量を相殺するカーボンオフセット・プログラムをプラスしてCO2排出量を実質ゼロにした。

 一般社団法人more treesとの連携で、高知県中土佐町の森の保全活動に生かされ、森がCO2を吸収することで、自社では削減が難しい製造と仕立て直し工程で排出する温室効果ガス排出量(シングル換算で37・2キロCO2e、デカボスコアで従来商品と比べた排出量58%に相当)が相殺される仕組み。シングル価格は8万2960円で、このうちカーボンオフセット・プログラムの費用が460円を占める。

 天然毛使いのマットレス「ラークオール」は、生産に再エネ電力を使用するほか、耐用年数経過後にふとんのように仕立て直しやパーツ交換を可能にして製品寿命を延ばす。製造工程で排出する生地の端切れを再生してタオルを開発、動物性のクズ毛を堆肥工場と連携し、有機肥料として再資源化するプログラムなどを内蔵し、廃棄と炭素排出を最小化するサーキュラーデザインを追求したマットレスとして、京都知恵産業創造の森が実施する「令和5年度京都スマートプロダクト」の認定を受けた。

 製糖工程でさとうきびを圧搾した際に発生する沖縄産のバガス(搾りかす)を活用した和紙糸使いのシーツ、カバーも提案する。

 再エネ電力とJクレジット(企業や自治体などの取り組みによって排出削減・吸収された温室効果ガスを、クレジットとして国が認証し取引できるようにした制度)の活用による再エネ率100%も達成(2022年)している。これらの取り組みが評価され、2月に東京大学で開かれた「脱炭素チャレンジカップ2024」(脱炭素チャレンジカップ実行委員会)で、「再エネ100宣言 RE Action賞」も受賞。パーパスを具現化している。