事業拡大の ステージへ  素材メーカー系商社の現在地(3)クラレトレーディング

2024年03月11日 (月曜日)

独自素材で“次の商品”

 クラレトレーディングのクラベラ事業部は、独自性のある新素材を活用することで、現在の重点分野に続く“次の商品・用途”の開発に力を入れる。そのために2024年度(12月期)から新たにマーケティングチームを立ち上げた。

 同事業部は22年度から衣料分野と資材分野の担当を統合した組織とすることで、自社の素材やモノ作りのサプライチェーンなど強みが評価される事業領域に経営資源を重点投入する体制にした。その成果が表れている。

 23年度は、衣料分野でスポーツ・アウトドア、スクール、介護衣などヘルスケア用途の縫製品が堅調。糸・生地も帯静電気防止繊維「クラカーボ」や濃色染め対応糸など独自性のある機能素材を使った商材への特化を進めたことで販売は安定的に推移した。資材分野もマイクロファイバーによるワイピング材や水溶性繊維「ミントバール」、メディカル関連などこちらも機能素材を活用した商材の販売が安定している。

 上野裕樹クラベラ事業部長は「当社の強みは素材と縫製を含めたサプライチェーン。そうした強みが評価される商材や用途に特化することで、事業ポートフォリオの転換が順調に進んでいる」と話す。

 一方で、現在の重点分野に続く“次の商品・用途”の開発が大きなテーマになっている。このため24年度から新たにマーケティングチームを立ち上げ、新商品や新規用途の開拓に取り組む。

 現在、同社は衝撃吸収性繊維「スパンドール」や防滑繊維「フィブレスタ」、優れた速乾性とドライ感が特徴のシンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」などユニークな開発品を持つ。いずれも従来はなかった新素材のため「当社が想定している以外にもさまざまな用途やアイテムで可能性があるはず。それを提案先と一緒になって考える」ことに取り組む。

 その一例として、マーケティングチームがスパンドールなどを使ったコンセプトシューズを作成し、スポーツ用品メーカーに提案するといった取り組みを進めている。同様の取り組みをエプシロンなどでも進めることで、素材の強みを生かせる用途やアイテムの開発に取り組む。