事業拡大の ステージへ  素材メーカー系商社の現在地(1)帝人フロンティア

2024年03月07日 (木曜日)

ASEAN地域に視線

 素材メーカー系商社が事業拡大の時を迎えている。原燃料・原材料価格高、為替動向、先が読めない消費マインドなど、厳しさが続く中で存在感を発揮している。高付加価値化やOEM・ODMビジネスの強化など、素材メーカー系商社の現在地を追った。

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 帝人フロンティアの衣料繊維部門は、海外市場の深耕を強化している。北陸産地との連携で高付加価値生地を作り、欧米市場の需要を取り込むほか、伸び代が期待できると捉えるASEAN地域やインド市場の開拓も進める。鈴木哲志取締役副社長執行役員は「高い価値を訴求し、利益拡大につなげる」と話す。

 衣料繊維部門の2023年度(24年3月期)は、製品事業が順調で、営業利益が前年実績と計画を大きく上回る水準で推移している。新型コロナウイルス禍が落ち着いたことで需要が回復したほか、一時混乱したサプライチェーンの安定化やコスト削減などが奏功する形だ。

 生地販売は、輸出が堅調な動きを見せている。欧州向けは勢いを欠くが、米国向けは堅調。中国市場向けは現地拠点による販売が健闘した。国内の生地販売は原燃料価格の上昇をはじめとするコスト高が響き、前年比では回復を見せているものの、計画には届いていない。

 24年度は、地政学リスクやコスト構造、為替、衣料品市場の二極化の加速など、事業を取り巻く環境は不透明との認識を示す。欧米向けや中国向けの生地販売は、製品での組み立ても含めて継続強化。国内は、高付加価値化の加速と同時に、産業資材部門と連携しカーテンなどのライフスタイル分野に目を向ける。

 継続強化する海外市場向け生地販売は、これまで米国と欧州、中国を軸としていたが、今後の成長が見込めるタイやインドネシア、ベトナム、インドを注力市場に加える。これらの国々への生地販売は「既にチャレンジを行っている」段階にあるが、積極的な強化・拡大策を進める。

 ASEAN地域とインド市場向けでは、タイの合繊織布・染色加工子会社であるタイ・ナムシリ・インターテックスを基点に、現地のファッションアパレルやスポーツアパレルに提案する。インドネシアの協力工場を活用したオペレーションも推進。ニットで先行しているが、織物にも広げていく。

 欧米市場向けについては、北陸産地との連携を深める。「世界トップレベルの良質な生地を広く販売することで産地の力になりたい」と話す。日本での生地販売も機能と環境の両面で存在感を示すとし、特に環境では「リーダーシップを取っていきたい」と強調した。

 24年度は、物流問題や為替動向、衣料品消費マインドの低迷、自然災害といったリスクを想定する。物流問題は顧客によってさまざまな要望があり、試行錯誤を繰り返しているとした。業績については23年度並みの利益とするなど“堅く”みている。中長期的には着実な利益拡大を志向する。