こだわりの糸 集結  ジャパン・ヤーン・フェア(2)

2024年03月04日 (月曜日)

北陸産地3社に注目

 「ジャパン・ヤーン・フェア」(2月15、16日)は紡績関連の出展者が中心で、合繊長繊維関連の出展者はあまり多くない。この点は同じ糸の総合展「北陸ヤーンフェア」との違いでもあるが、今回は北陸産地企業3社が顔をそろえた。能登半島地震で被災した企業もあるが、出展を通じて前向きな姿勢を示した形だ。

 合繊長繊維の糸加工メーカー、山越(石川県かほく市)は2020年以来4年ぶりの出展となるが「反応は悪くなかった」。特に好評だったのはフルダル、セミダル、カチオン可染の3者複合加工糸。ポリエステル長繊維では出しにくい天然繊維ライクさが受けた。既に一部用途で採用されるが、糸加工が難しく、大量生産ができないのが難点だと言う。

 糸商のシモムラ(同小松市)は多くの来場者が訪れていた。今回展は帝人フロンティアのペットボトル再生繊維「エコペット」の染め糸ブック帳のリニューアルをメインに訴求した。従来の88色から322色に大幅に拡充した。糸染め子会社の園田産業(同能美市)を生かした展開でもある。

 技術確立したフッ素フリーの先染め糸もアピールした。撥水(はっすい)加工糸は染色が難しいが、撥水性を維持した上で、染色問題もクリアする。その他「ライクラT400」使いで、ピン仮撚り加工とDDW加工の超捲縮による高ストレッチ糸も提案した。

 糸商のタロダ(同内灘町)は生分解ポリエステル糸「クラフトエボリーテ」を提案した。レギュラー糸の4倍という高価格だが「サステイナブルな点を評価され衣料向けに採用が進んでいる」と話す。再生ポリエステル糸「エコッタ」シリーズも引き合いが多かったと言う。

 ユニチカトレーディングは数少ない合繊メーカー出展者の一つ。重点的に打ち出したのは「シルミーDR」。常圧カチオン可染のフルダル糸で、ポリマー・チップから、グループ企業の上條精機(京都府宇治市)による紡糸ノズル(ヴァリアス断面)までグループの技術を集めて開発した。「ほかにはまねできない」と担当者は胸を張る。

 独自ポリマーはヤング率が低く、シルクを上回るソフト性を持ち、さまざまな断面糸で構成するため毛細管現象による吸水速乾性を持つ。常圧可染のためウールなど天然繊維との複合もしやすい。スポーツ、アウトドア中心だが、ソフト性を生かし肌着も狙う。