特集 染色加工(10)/染色機器 デジタル技術が進化/エプソン販売/日阪製作所/岡山県織物染色工業協同組合/エックスライト社

2024年02月28日 (水曜日)

〈新型デジタル捺染機発売/前処理と後処理を1台で/エプソン販売〉

 エプソン販売が提案するインクジェットデジタル捺染機「Monna Lisa」(モナリザ)シリーズは、天然繊維か化学繊維かを問わず多様な生地への印捺を可能にし、アパレルやインテリアなど幅広い用途に対応する。

 独自開発の「ジェネスタインク」の発色と「プレシジョンコアプリントヘッド」の正確なインク吐出により、極彩色、グラデーション、幾何学模様で精緻な表現が実現する。

 今春、同シリーズから最新モデル「ML―13000」を発売する。

 プリントヘッド13個を装備したML―13000はインク7色に加え、前処理剤、オーバーコート剤、発色剤といった機能性インクを搭載する。プリントの前処理と後処理も1台でこなす「シングルステップソリューション」を実践する。

 柄の部分に集中して塗布する機能「ドットオンドット」により、生地の風合いを生かしたプリントを可能にする。

 対応するインクは顔料のみとしたのも特徴で、加工時の水の使用量を削減し環境保全に貢献する。

 使いやすさを追求して導入のハードルを下げた点も訴求し、多様な用途での活用を推進する。

〈環境配慮型の新機種開発/海外市場にも拡販/日阪製作所〉

 日阪製作所は今年、環境配慮型液流染色機を中心に海外市場での拡大に注力する。日本では染工場の合理化や自動化、環境負荷低減につながる機械の提案に力を入れる。

 日本では節水につながる新水洗機構を保有する液流染色機「サーキュラーCUT―SQ」への注目が高まっているほか、染色から水洗まで全工程での自動補正運転を可能とする「ACCS」も導入が進んでいる。足元では特に人手不足に対応する自動化、合理化への要望が高い。今期(2024年3月期)の日本での販売は、液流染色機が前期に伸びた反動で減収となるが、ACCSなどの拡大でカバーする見通し。

 液流染色機では、環境配慮型の新製品を投入する。大容量化で1対4~6の低浴比を実現した「CUT―ZR」に、SQ型の新水洗機構を付与した新製品「CUT―SG」の提案が始まり、日本では今春から導入が始まる見通し。

 今後は海外でもSQ型とSG型を軸に拡販を狙う。足元ではベトナムやインドネシアからの引き合いが堅調で、インドなど新興市場への提案も強化する。

 プロセスエンジニアリング事業部は新たに開設した生駒事業所(奈良県生駒市)に移り、染色仕上機器も1月から同事業所での生産が始まった。海外への販売も拡大していく中、日阪〈中国〉機械科技での生産機種を拡充することも検討する。

〈色の品質管理をデジタル化/クラウドベース活用も/エックスライト社〉

 測色計製造のビデオジェット・エックスライト(エックスライト社、東京都江東区)は、デザインから生産までの工程で色の承認とコントロールを行うクラウドベースのコミュニケーションシステム「テキスタイルカラーハブ」を提案する。品質管理もデジタル化することで、色の品質を向上させながらグローバルサプライチェーン全体の無駄を省くメリットを訴求していく。

 提案先には、テキスタイルカラーハブを通じて、色の仕様を記載した書類を、ブランド企業と生産を担うサプライヤーが共有するデジタルワークフローを示す。その上で顧客の生産環境に合わせ、先端的なベンチトップ分光測色計などのツールも提案し、色に関する作業のデジタル化を総合的に支援する。

 同社は、顧客が色を指定した後のデザイン、製版、調色、印刷、納品といった工程で課題を解決する製品、サービスを提供するエックスライト(米国)の日本子会社。今後、色の確認のためのサンプル作りをなくせるメリットが潜在するアパレル産業への提案を強める方針。

〈「倉敷染」の発信強化/岡山県織物染色工業協同組合/ループラス+倉敷染デニムPJなど紹介〉

 岡山県織物染色工業協同組合は安心・安全な独自の加工ブランド、「倉敷染」の発信を強化している。

 倉敷染は染色、製品加工において、独自の品質基準に沿った安全な加工を保証するブランド。世界的な大手アパレルメーカーを中心に構成する、有害化学物質排出ゼログループ(ZDHC)が作成したリストに準じた独自基準を設定し、各種工程を経ても有害物質が残留しない生地を倉敷染として認定する。生地の品質検査は、同組合と提携関係にあるニッセンケン品質評価センターが行うことで、第三者機関による安全性も保障する。

 昨年10月31、11月1日に開かれた「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)24秋冬」に出展。墨で染めた生地を「墨染」として打ち出したほか、クラボウとデニム整理加工のコトセン(岡山県倉敷市)が進める「ループラス+倉敷染デニム」のプロジェクト(PJ)も紹介した。

 同PJは倉敷染の認定工場であるコトセンで発生する試験布を、裁断片などを独自の開繊・反毛技術で再資源化するクラボウの「ループラス」の原料として利用する循環型のPJだ。デニム製造の篠原テキスタイル(広島県福山市)、山足織物(岡山県井原市)で同素材を採用した生地の開発を進めていく。

 倉敷染として今後も展示会に出展しながらアピールを続ける。同組合の田代雄久理事長(豊和社長)は「海外展開に向けても準備を進めていく」と話す。