特集 染色加工(4)/市場環境の変化に対応/岐セン/帝人テクロス/尾張整染/艶金

2024年02月28日 (水曜日)

〈染色加工黒字化にめど/コンパクト加工けん引/岐セン〉

 岐セン(岐阜県瑞穂市)は2024年3月期、染色加工事業の黒字化にめどを付けた。上半期は全体(単体)で4年ぶりに営業黒字化。別注ユニフォーム向けの受注が入ったほか、木材染色も新車種向けが決まり利益確保した。

 染色加工の赤字は残ったが「通期では水面浮上できる見通し」(後藤勝則社長)。けん引する一つがナイロンのコンパクト加工「バゼロ」シリーズ。独特なハリコシ感やナイロン特有の表情、環境に配慮した加工方法である点などが評価され、メンズアウター向けを主力に加工量を伸ばす。

 バゼロのほか、ツヤ感など光沢を表現する「バゼライト」、ソフトに仕上げてよりコットンライクな「バゼソフト」をラインアップ。さらにシワ感を強調し新しい表面感を持つ新タイプも開発中だ。今期は20万㍍、来期は非フッ素の撥水(はっすい)加工との組み合わせも含めて60万㍍へ拡大する。

 輸出向けの染色加工にも注力する。既に手掛ける中東民族衣装向けに加え、欧米メゾン向けや中国富裕層向けに力を入れる発注者の動きに対応し、これらに応じた開発に力を入れる。

〈設備更新し内製化/構造改革に取り組む/帝人テクロス〉

 カーシート地向けを主力に糸染め、織布などを行う帝人テクロス(愛知県稲沢市)は、生産体制を整備し外注分を内製化する。「社内だけで完結し稼げる体制を作る。来期(2025年3月期)もその土台作りに重点を置く」(中島俊広取締役)。

 同社は自動車内装材製造のスミノエテイジンテクノ(STT、大阪市中央区)の子会社で、カーシート地染色が主力の尾張整染(愛知県一宮市)の親会社に当たる。

 糸染め、織布のほか、ナノファイバーやマイクロファイバーなど特殊な糸染めも行うが、採算的に厳しい状況が続いていた。このため、本格的な収益改善に着手。コスト上昇に伴う価格改定を実施しながら、生産体制の整備も進めた。老朽化する織機は更新しエアジェット織機4台を新たに導入した。

 来期はチーズ染色用の先巻き(染色前に穴あきボビンに糸を巻き直す)ワインダーの更新や撚糸機の入れ替えも検討する。これらは外部委託分を内製化するのが狙い。一方で、チーズ染色機は受注に見合う形で60%削減する。

〈来期も車安定で増収/開発へ若手積極登用/尾張整染〉

 カーシート地など自動車内装材の染色加工が主力の尾張整染(愛知県一宮市)は来期(2025年3月期)、自動車用で大型案件が立ち上がるほか、自動車共用材の加工も安定的に見込めることから増収を目指す。

 今期は前期比増収増益の見通し。自動車の生産台数が回復基調にあるほか、インテリア向けが同業他社の撤退もあり、前期比90%増で推移したことが寄与した。原燃料高に伴う加工料金の値上げも進んだ。

 中島俊広常務は「今後の課題は人材育成」と語り、若手、女性を積極的に登用した開発に力を入れる考えを示す。昨年、開催した「第7回加工技術プレゼンテーション」も前回(4年前)に比べて開発担当者を若手中心に6割入れ替えた。女性も5割超を占めた。

 同展では46の新加工技術を生地や製品で披露したが、来場者からは好評で12月末まで会期を延長するなど新体制での開発に手応えを示す。

 今春には本社工場、石川工場(石川県能美市)それぞれ3人の新入社員が入るが、彼らも開発に投入する予定だ。

〈基本の生産管理を徹底/異業種連携と海外自販も/艶金〉

 編み地染色が主力の艶金(岐阜県大垣市)は今期(2025年1月期)、受注回復が見込めない中、改めて基本の生産管理を徹底する。省エネ型染色機の導入も進める。既に設備更新により液流染色機(2チューブと1チューブ)の試運転を始めた。

 前期は秋冬向けの受注が不振だった。加工料の改定でわずかに増収も、住友化学の染料撤退に伴う切り替えロスの影響もあり採算は悪化した。今期は生産管理体制を強化するとともに、環境配慮型染色加工場としての特徴を生かし、異業種連携を強化する。墨勇志社長は「環境対応が消費者を含めた既存分野に広がるには時間がかかる。まずは異業種と新ビジネスに結び付けたい」と話す。既に豊田合成とエアバッグ布のアップサイクル、太平洋工業とはクッション縫製で取り組みを進める。

 異業種連携に加え、環境意識が高い海外へ公的、民間のマッチングサイトを活用した自主販売にも着手した。テキスタイルのほか、食べ物や植物の加工後残さを活用したのこり染めによる製品「KURAKIN」も準備を進める。