特集 事業戦略(5)/シキボウ/取締役常務執行役員 繊維部門長 加藤 守 氏/着々と海外拠点構築/日本以外の売り上げ倍増へ

2024年02月27日 (火曜日)

 シキボウは海外拠点の構築が着々と進んでいる。1月にはベトナムに現地法人「シキボウベトナム」を立ち上げた。堅調な中東民族衣装向け生地輸出とともに、新型コロナウイルス禍での遅れを取り戻すべく海外拠点を軸に新ビジネスにつながる動きを加速。加藤守取締役は現状15~20%を占める繊維部門の海外売上高を将来的には「倍にしていきたい」と話す。

――第3四半期(2023年4~12月)は売上高が前年同期比で横ばいでしたが、営業損益の赤字幅は縮小しました。

 分野で好不調が分かれました。好調だったのは中東民族衣装向け生地輸出。円安の影響もあって、日本製生地に対する需要は活気づいており、枯渇感があります。3月からラマダンセールのシーズンに入り、当面は輸出が拡大するとみています。

 ニット製品も堅調ですが、価格改定も進み、店頭で売れるかどうか。天候不順や消費低迷によって売れなければ次の発注に響く可能性があります。リネンサプライ事業はインバウンド需要の拡大もあり好調です。

 不調なのが原糸と生活資材事業の寝装品の販売です。原糸は手持ちの在庫が一昨年の綿花高で確保していた原料から置き換わりつつあります。しかし、中国や東南アジアの現地サプライヤーが採算度外視で在庫を手放している中で競合しており、非常に厳しい環境にあります。円安によって赤字で成約するわけにもいかず、かといって成約も多いわけではありません。売り上げができても利益にならない悪循環になっています。

 寝装品では羽毛ふとんの側(中わたを入れる前の半製品)地の販売が低調です。店頭販売が不振で、市場全体で在庫調整になりつつあります。

 ユニフォームは価格転嫁が少しずつ反映されつつあり、次の上半期にはもっと効果が発現してくるものと考えています。ただ、販売数量そのものは落ちる傾向にあります。単にリピート品の価格を改定するのではなく、SDGs(持続可能な開発目標)に沿った環境配慮や高機能など付加価値の高い新商品へと置き換えていかなくてはいけません。

――通期の見通しは。

 営業損失は縮小しそうですが、販売に勢いがありません。しかし、来期は最低限、黒字必達です。

 その方策として一つはコロナ禍で遅れていた海外販売の拡大にもっと力を入れていきます。外部環境の変化の影響をなるべく抑えるためにも海外販売と内需のバランスを保つ必要があります。現状では繊維部門の売上高のうち15~20%が海外です。これを将来的には倍にしていきたいと考えています。

 1月29日にはベトナムに現地法人「シキボウベトナム」を立ち上げました。これまで製造による連携が中心でしたが、これからは販売での連携も加速します。既存のルートだけでなく、現地の協力企業や日本の商社とも今まで以上にタイアップしながら新たな販路を開拓していきます。

 ベトナムでは日本向けに製品ビジネスを拡大していますが、欧米や東南アジアなど第三国輸出も狙います。タイではグループの新内外綿の商事子会社JPボスコを活用し、差別化素材の対米輸出に取り組んでいます。

 拠点を通じた内販にも取り組みます。インドネシアの紡織加工会社のメルテックスでは資材やスクールシャツで現地向けが少しありますが、まだ少ない。ベトナムでは政府が繊維、衣料品業界が製造業全体で国内調達率を高める目標を定めており、その流れにも乗っていきたいですね。

――昨年10月にブランド戦略プロジェクトを立ち上げました。

 中長期的にシキボウの商品や素材を含め、企業価値そのものを高めるために立ち上げました。資本提携するファッションブランド「アンリアレイジ」とは素材協力を継続するとともに、別注のユニフォームでは大手企業との案件も進んでいます。

――ユニチカトレーディングとの連携では今期3億円の売り上げ規模を見込んでいます。

 ユニフォーム用途を中心に、少しずつ進んでいます。これまでは商品企画を軸に展示会で披露するだけでしたが、同じ分野の担当者同士が相談しながら、ターゲットを定めて営業活動に取り組む動きも活発になってきました。

――設備投資の計画は。

 中東向け生地輸出の拡大を受け、染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)では外注に発注していた加工を自社に取り組み、これまでの加工量を倍増させます。シキボウ江南ではユニフォーム用途の加工も多いですが、メルテックスとも連携させながら、ユニフォーム地と中東向け生地の加工でバランスを保っています。中東向けの場合、最後の仕上げの部分で意外とマンパワーを必要とし、そこでは逆に外注の活用を図ります。連続染色の加工設備の老朽化も進んでおり、来期にスチーマーやベーキング機の設備の更新を検討しています。

 メルテックスでは昨年、混打綿機やカード機などの紡績前工程の設備を新設しましたが、老朽化が進む精紡工程の更新も考えています。ユニフォームや中東向けの生地の生産が多いですが、販売戦略に沿った設備の導入を図っていきます。