特集 事業戦略(4)/大和紡績/取締役製品・テキスタイル事業本部長兼産業資材事業本部長兼産業資材部長兼生産技術部長 青柳 良典 氏/新商品開発のスピード加速/原料から製品一貫の強み生かす

2024年02月27日 (火曜日)

 大和紡績は下半期(2023年10月~24年3月)に入り、産業資材、製品テキスタイル事業とも想定より動きが鈍いものの、青柳良典取締役は少しずつ「フル生産に向けた流れができつつある」と話す。「まだまだユーザーの求める開発スピードには達していない」としながらも、来期から始まる新中期経営計画に向け、好スタートを切るための準備が整いつつある。

――上半期(23年4~9月)まで産業資材、製品・テキスタイルの両事業本部とも増収増益でした。下半期に入ってからの進捗(しんちょく)は。

 製品・テキスタイル事業ではアパレル製品が昨年11月まで暖かったこともあって、動きが鈍いです。原材料や原燃料などさまざまなコスト増によって値段が上がっていることで、販売数量が減ってしまっている点もあります。衣料品よりもむしろ旅行や食事の方にお金をかけるようになっているのかもしれません。

 産業資材事業は東海や東北地方を中心に自動車関連向けの受注が活発になってきました。自動車のパッキン材に使われるゴムや搬送用ベルトなどの動きが堅調です。

 カンバスは、新聞紙を中心に紙需要が大きく減っていますが、段ボールや家庭紙に切り替える動きもあり、それほど大きく変わっておらず、踏ん張っています。

 建築シートは東京や大阪など都市部の再開発もあって順調に伸びています。トラックシートでは従来品に比べ軽量な合繊帆布「エアフェザー」などの販売が少しずつ増えてきました。

 電子部品向けカートリッジフィルターは、下半期から盛り返すものと期待していましたが、想定していたよりも受注が少なく苦戦しています。ただ、上半期で底を打っており、徐々に受注が増えつつあります。

 播磨研究所(兵庫県播磨町)との連携で、新型フィルターの試験販売に入っています。また、取引先の工場も稼働が落ち着き新商品をテストしてもらいやすい環境にあります。採用まで時間がかかりますが、試験案件は増えていますので、今年の後半には良い感じになるものだと考えています。

――今年も値上げが続くのでしょうか。

 物流費は24年問題もあり、着実に上がっていくものとみられ、吸収できない部分は転嫁していくしかありません。電気代・ガス料金などユーティリティーコストは落ち着いていますが、政府の補助金は縮小する見通しで、実質的にはコストアップが続くことになります。もちろん自助努力はしていきますが、それを上回る場合は取引先へも負担していただくしかありません。今後も成長していくためにも、コストが上がった分は価格転嫁を着実に進めていきます。

――通期の見通しは。

 動きが思っているよりも良くないですが、失注しているわけではありません。新型コロナウイルス禍の中であれば、そのままビジネスが立ち消えになるという感じでしたが、そういった感じはなく、商品のテスト案件も増えており、バルク生産につながるものと期待しています。特にフィルターに関連する半導体分野は今年から26年にかけて大増産に入ってくるものとみています。

――来期から新しい中期経営計画が始まります。

 新商品開発のスピードが課題です。21年に合繊、産業資材、製品・テキスタイルの3事業本部の研究開発機能を播磨研究所に一本化し、横串による開発もできるようになりました。しかし、まだまだユーザーの求める開発スピードには達していません。もっと顧客に寄り添う開発スケジュールを組み立てながら、喜んでもらえるように速やかな対応を目指していきます。

――環境配慮型の素材や取り組みによる総合提案戦略「エコフレンド」プロジェクトの再構築も進めています。

 当社にはレーヨン、ポリオレフィン系合成繊維といった原料から、さまざまな最終製品まで一貫で生産できる強みがあります。

 製品・テキスタイル事業ではリサイクルをはじめとした環境配慮型素材の提案が非常に増えています。リサイクルポリエステルを米綿で包んだ2層構造糸「ツインレット」や、汗染み防止素材「リペルーフNW」といった天然由来成分による後加工素材の採用が広がっています。合繊でも生分解性を持つものや、綿といった天然繊維でありながらも合繊並みの物性を持つ素材に対するニーズが高まっており、当社でも多彩な開発を進めていきます。

 産業資材事業ではドライヤーカンバスを回収し、樹脂に戻してから、別の用途で利用する試みも始めています。土木資材のトンネルシートなど、当社が展開するさまざまな商品でリサイクルを検討しています。一番の問題は不純物を取り除く部分であり、コストが上がってしまう点です。回収の問題もあります。これらの課題はなかなか1社では解決できません。いろいろな取引先をはじめ、関連企業と連携しながら取り組みを進展させていきます。