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東洋紡エムシーFO膜/真水回収率65%超達成/海水淡水化実証実験で

2024年02月26日 (月曜日)

 東洋紡エムシーの中空糸型正浸透膜(FO膜)を採用した米トレビ社の海水淡水化実証実験がこのほど終了し、海水から1日当たり500立方㍍の真水を作ることに成功した。海水からの真水回収率は65%を超えており、次世代型の省エネルギー海水淡水化システムとして期待が高まる。

 海水淡水化は従来、蒸発法や逆浸透膜(RO膜)法が実用化されている。ただ、いずれも電力などエネルギーを多く消費する。これに対しFO膜法は浸透圧差を駆動力として利用するため、蒸発法やRO膜法と比べて少ない電力で海水淡水化が可能だ。

 トレビ社はFO膜法による海水淡水化システムの研究開発・製造を行っており、米エネルギー省の資金援助でハワイ州立エネルギー研究所(NELHA)の敷地内に実証実験用の海水淡水化プラントを建設。そこで東洋紡エムシーのFO膜を採用した。集光型太陽熱発電技術を応用し、稼働に必要なエネルギーの大半を賄う省エネルギー型海水淡水化システムとなる。

 今回の実証実験は2022年6月から9月にかけて設備が稼働し、得られた真水は農業用水に活用された。実験の成功を受けてトレビ社は今後、1日当たり6千立方㍍規模の海水淡水化システムを同じ敷地内に建設する。東洋紡エムシーはFO膜の供給を通じて世界の水不足など環境課題の解決に貢献することを目指す。

 トレビ社は12年から東洋紡と協業を開始し、20年には商業利用可能なFO膜法水処理システムを開発した。東洋紡エムシーはトレビ社に出資もしており、FO膜法による海水淡水化プラントの普及に向けた協業関係を強化する。