特集 小学生服(2)/有力学生服・素材メーカー ニーズ取り込む商品を/学校や児童の悩みを解決へ/トンボ/菅公学生服/オゴー産業/東レ/ニッケ
2024年02月19日 (月曜日)
シェア拡大が難しいといわれる小学生服市場。そのような中でも有力学生服、素材メーカーはニーズに合った商品の提案に加え、学校や児童、保護者の悩み解決に向けたサービスなど、さまざまな視点から提案を進めている。
〈トンボジョイ販売堅調/トンボ〉
トンボは今上半期(2023年7~12月)、小学生服部門では残暑による秋口の買い替え需要減少が影響し前年同期比微減収となった。一方、今春の入学商戦に向けて受注は順調で、前年並みを見通す。
商品では店頭向けの「トンボジョイ」の販売が堅調に推移する。防汚、撥水(はっすい)、撥油、静電防止加工に加え、サイズ調整機能やストレッチ性による着心地の良さが評価されている。
22年に発表した、デザイナーの皆川明氏が手掛けるファッションブランド、「ミナ ペルホネン」とのコラボレーション制服は、流行に左右されず、長年着用できるデザインが特徴。
SDGs(持続可能な開発目標)の観点などへ賛同する学校に提案を進めているが、既に25年度向けの採用も決まっている。
中学校では性的少数者(LGBTQ)に配慮する流れから、ブレザー制服に刷新する動きが地方にも広がるが、小学生服でも長ズボンの需要が増えるといった影響があると言う。
〈ニットシャツ販売伸ばす/明石スクールユニフォームカンパニー〉
明石スクールユニフォームカンパニーは小学生服部門で、ニット製品の販売を伸ばしている。ニット製シャツの「ラクポロ」は、シワになりにくいイージーケア性や、着心地の良さなどで好評。中村孝営業本部スクール営業部長兼第二営業課長は「暑熱対策などで好評で、着やすさが評価されている」と話す。
給食着の販売も伸びる。給食着はこれまで児童間で使いまわすケースが多かった。しかし、新型コロナウイルス禍で衛生意識が高まり、個人買いが増える傾向にある。家庭での洗濯や手入れが簡単なニット製の給食着の需要が高まっている。
同社は防災関連の商品提案も強みだ。「防災学習ブック」や防災ヘルメットの「セーフメット」など、豊富なアイテムをそろえながら提案を進めており、「学校からの関心も高まっている」。
主力の「富士ヨット小学生服」や、人形玩具の「リカちゃん」をモチーフとする「リカ富士ヨット」の販売は、児童減に伴いわずかながら減少傾向にある。
〈非認知能力育成プログラムを拡充/菅公学生服〉
菅公学生服は小学生向けで、主力ブランド「カンコータフウォッシュ」を軸に販売を進めている。教育ソリューション事業を行うグループ会社で児童向けプログラムを拡充するなど、さまざまな角度で学校への提案に力を入れている。
今春の入学商戦に向けては、小学生服部門では販売は前年並みで推移する。商品ではカンコータフウォッシュの販売が堅調だ。曽山紀浩取締役は「洗濯を繰り返しても劣化しにくい洗濯耐久性など、品質で評価をもらっている」と話す。
グループ会社のカンコーマナボネクト(岡山市)では教育ソリューション事業にも取り組んでいる。同社では非認知能力(数値化が難しい個人の特性による能力)の育成に向けたプログラムをそろえる。企業との協業も進め、玩具メーカーのメガハウス(東京都台東区)と、オセロを題材にユニバーサルデザインを学ぶことのできるプログラムを4月以降、小学校で展開していく。
〈独自の取り組みで差別化/オゴー産業〉
オゴー産業(岡山県倉敷市)は制服の品質だけでなく、地域の安全な環境づくりにつなげる「全国地域安全マップコンテスト」や、道徳心の啓発や寄付を通じて世界の子供たちを支援する「セーブ・ザ・チルドレン」とのコラボレーション制服など、他社と差別化した独自の取り組みで販売につなげている。
小学生服部門の販売は落ち込むことなく堅調に推移している。生産状況も順調。片山一昌取締役は「小学生服は学校別注ではなく、なるべく定番制服にして備蓄期に生産できるようにしていく」と話す。
GPS装着に対応した機能型小学生服「プレセーブ」など独自商品のほか、子供の危険回避能力の向上と地域の安全な環境づくりにつなげる、全国地域安全マップコンテストなど商品以外の提案も強み。片山取締役は「学校から評価してもらっている」と語る。
同社では標準服を採用することのメリットなどを盛り込んだ啓発冊子を提案時などに活用する。同冊子が作成から12年目になることから、リニューアルも視野に入れる。
〈教育に生かせる制服を/東レ〉
東レは、小学生服市場に向け安定した販売量を維持している。ただ、ブレザーを中心に古くから採用されている素材も多く、素材の統一化や新素材への置き換えを進めることで、供給の効率化や市場の活性化につなげる。
最近では梳毛調ポリエステル織物「マニフィーレ」が、快適なストレッチ性や防シワ性、ウオッシャブル性など高い機能から中高だけでなく、小学生服での採用が増加。作業服などさまざまなユニフォーム用途へ採用が進むストレッチ素材「ライトフィックス」の拡販にも力を入れる。柄物ではインクジェットプリントの活用にも乗り出した。
バイオマス原料によるポリエステル繊維「エコディア」や、再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)といった環境配慮型素材を広くそろえることから「教育ツールとしての制服をアパレルメーカーと連携しながら考える必要がある」との指摘。小学生のうちからSDGs(持続可能な開発目標)に対する教育活動が盛んになる中、新たな切り口で小学校への制服の普及につなげる。
〈服から服への循環に向け/ニッケ〉
ニッケは、独自の教育支援活動として全国の学校への出張授業「ウールラボ」を開催している。同社のスタッフが出向き、講師として実験を交えながら繊維の知識や衣服の取り扱い方などを教える内容で、ウールの機能やサステイナビリティーについても解説。現在は中学校、高校が中心だが、小学校の授業でもSDGs(持続可能な開発目標)に触れる機会が増える中、小学校への出張授業も視野に入れる。
私立駒場学園高等学校(東京都世田谷区)の協力を得て、「服から服への循環型学生服」の実証実験を進めており、新たなリサイクルプロセスの構築も目指す。そのベースになる素材は、昨秋増設し稼働し始めた革新精紡機による環境配慮型ウール・ポリエステル混紡糸「ブリーザ」。製造時のCO2排出量を約25%削減し、マイクロプラスチックの脱落を約75%も削減できる。そのブリーザを使った生地「エミナル」の販売を強化しており、循環型社会への貢献とともに、ウールへの関心を高めるきっかけにつなげる。