特集 スポーツ&アウトドアウエア(2)/24春夏向け 注目スポーツ素材/旭化成アドバンス/東洋紡せんい/帝人フロンティア

2024年02月15日 (木曜日)

 素材メーカーにとってスポーツ・アウトドアウエアは、合繊の高い機能性などが生かせる分野の一つだ。24春夏向けスポーツ素材は、機能のレベルアップに加え、環境配慮型原料、他のファッション分野への展開も含めた幅広い用途への訴求がキーポイントになっている。

〈旭化成アドバンス/ニット生地の海外販売強化〉

 旭化成アドバンスは、スポーツ用途に向けてニット生地の海外販売拡大に取り組む。ターゲットとなる分野を絞り込み、キュプラ繊維「ベンベルグ」使いなど独自性のある生地提案で新規開拓を進める。

 同社の2023年度(24年3月期)のスポーツ素材販売は、海外向けで主力のナイロン高密度織物が堅調に推移した。市況そのものは決して良くないものの、同社の生地を採用しているスポーツ・アウトドアブランドの商況が好調だったことが要因。国内販売も同様に好調なアパレル・ブランドとの取り組みが奏功し、販売が堅調だった。

 24年度は主力の織物に加えて、ニット生地の海外販売拡大を狙う。サイクリングやランニングなど重点分野を絞りこみ、ベンベルグ混のライトウエート生地などを提案する。

 そのほか生地の片側が32ゲージ、片側が8ゲージのダブルニット生地“クオーターゲージ”など独自性の強い商材で新規取引の開拓に取り組む。

 一方、ナイロン織物は昨年ブランドを「インパクト」に統一した効果を発揮することがテーマ。リブランディングによって認知度を一段と高め、さまざまな機能も付与したバリエーションの提案に取り組む。

〈天然繊維の活用拡充/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいはスポーツ分野に向けて、特にタウンユースに対応した素材感や機能を持った商品の提案に力を入れる。そのために合繊のほか、綿など天然繊維の活用を拡充する。原綿改質やリサイクル技術の導入も積極的に進める。

 同社の2023年度(24年3月期)のスポーツ素材販売はここまでほぼ計画通りに推移している。特に高捲縮(けんしゅく)・高密度ニット生地「スクラムテック」は好調が続く。ただ、国内のアスレチック需要は大きく拡大しにくいことから、タウンユースに対応した提案を強化する。

 切り口の一つが綿混素材の拡充だ。改質によって綿を疎水化し、吸水速乾性や肌離れ性を高めた「アイ・コット」など機能を併せ持った独自性のある素材をスポーツ用途に積極的に投入する。

 また、世界的に一段と要求が強まっているサステイナビリティーへの取り組みとし、自社グループ内の縫製工場で発生する端材をマテリアルリサイクルする「T2T」なども積極的に導入する。取引先アパレル・ブランドとの取り組みが必要な仕組みのため、24年度には具体的な成果を上げることを目指す。

 そのほか、海外販売が好調な日系スポーツアパレルに向けて日本素材の海外販売拡大も狙う。既に中国や韓国で実績が拡大している。

〈北米、欧州、韓国市場で深耕/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアのテキスタイル第一部は、北米と欧州、韓国の各市場でスポーツ・アウトドア向け素材の販売拡大を図る。北米は機能と質感、環境対応を兼ね備えた生地を投入し、欧州は顧客開拓に再度力を入れる。韓国の需要も着実に取り込み、2024年度は全体で前年比10%の売り上げ増を目指す。

 23年度は北米向けが堅調に推移したが、欧州市場はウクライナ問題が長期化していることなどから22年度に比べると厳しい。全体でも22年度実績には届かない数字で推移している。ただ、欧州は過去最高水準だった22年度には届かないものの、一定の数字を確保しており、計画に沿って進んでいる。

 来年度は北米を主軸に拡販を目指す。米国には拠点があり、生地販売の担当者らと連携を深める。商品では、スパン調ポリエステル生地「ポリリズム」、綿の質感を再現した「アスティ」などを重点訴求する。高機能生地の展示会「ファンクショナル・ファブリックフェア」などに出展し、新規顧客を開拓する。

 欧州市場向けは「復活」を期す。北米向けと同様、機能・質感・環境対応を併せ持つ素材を軸に、現地拠点の担当者と連携しながら営業活動に取り組む。スポーツ用品展示会「ISPO」などにも出展する。韓国は、欧米や日本で評価されている素材などを提案する。

〈YKK/高機能性ファスナー提案〉

 YKKは、機能性を追求したファスナーを開発しており、操作性を高めた製品については、スポーツシーンに向けても積極的な提案を進めている。

 「クリックトラック」は、ファスナーを閉める際の操作を簡単にした製品。開ファスナーの使用に抵抗を感じるユーザーが、衣服の着脱をしやすくなるように配慮されている。

 開部パーツをボタンのように重ね合わせてスナップするだけで、開具が自動的に回転・係合(組み合わせる)し、ファスナーを簡単に閉じることができる。開具を大きく丸い形状にしたことも、操作の簡易性の向上につながっている。

 「ビスロン・マグネットタイプ」は、左右の開具にマグネットが埋め込まれているため、開具同士を近付けるだけで閉じる。

 従来のファスナーは、左右の開具を係合する動作が必要で、高齢者や手が不自由な人にとって開閉作業が負担となるケースも生んでいた。ビスロン・マグネットタイプは、磁石の力によって片手での開閉も可能となり、手元を見なくても操作ができるため、ファスナーの使用を敬遠しがちな人たちにとっても使いやすい。

 その操作性によって、キッズウエアやユニバーサルファッションに加え、スポーツシーンにまで用途を広げている。こうした発展性が評価され、2020年度の「グッドデザイン・ベスト100」を受賞した。