特集 スポーツ&アウトドアウエア(1)/成長の鍵握る高機能化

2024年02月15日 (木曜日)

 スポーツ用品大手は新型コロナウイルス禍による苦戦から完全に脱却し、好決算が続く。原材料の高騰などによる収益圧迫懸念はあるものの、引き続き安定成長を維持するとみられる。今夏開催のパリ五輪に向けたスポーツ機運の盛り上がりも追い風として期待できそうだ。

 新たな成長の原動力として大手メーカーが注力するのは海外展開と消費者に直販するDtoC、そしてブランディングだ。コロナ禍以降、DtoCを重点戦略としてきたデサントは、2025年3月期からの次期中期経営計画において「デサント」ブランドの日中韓事業で収益倍増を掲げる。アシックスも24年12月期からの3カ年新中期経営計画で、デジタル技術を軸にしたグローバル化の加速と高収益体質の構築、アパレル分野再建を目指す。

 一方、コロナ禍で裾野が広がったキャンプをはじめとするアウトドアアクティビティー関連は一服感が出ており、明暗が分かれている。同分野のアパレル各社は独自ブランドの強化や、一過性のブームに流されないコア層に向けた高機能製品の投入などで深耕を試みる。

〈トレーニング向けテックウエア/ジャケットやパンツで新作/デサントジャパン〉

 スポーツテックアパレルを追求するデサントジャパンは、「デサント」ブランド24春夏でトレーニングウエアコレクションを投入する。アスリートの快適なトレーニングのための機能を付加したテックウエア。シンプルでミニマルなデザインとシックなカラーリングで、都会的な印象を醸し出す。

 軽いランニングやウオームアップに適したストレッチ素材を採用したジャケットの左右ポケットは、内側がメッシュ生地になっており、ファスナーを開けるとベンチレーション機能を発揮。ランニングショーツは、足上げ時の生地の突っ張り感を軽減するスリットや、縫い代を表に出すことで肌面をフラットにして着用快適性を高めた。

 ハーフスリーブタイプのシャツには、細い糸を高密度に編み上げて肌側に凹凸のある立体感のある生地を採用。速乾性が高くさらりとした快適な着用感を得られる。ジョガーシルエットのロングパンツは動きが大きくなる太ももから下の部分にニット素材をコンビネーションしたハイブリッド型。タイツとショーツのレイヤードスタイルのようなスタイリングと着用感を実現した。

 アイテムは、「トレーニングフルジップアップジャケット」「ランニングショーツ」「ライトハイゲージニットハーフスリーブシャツ」「ランニングロングパンツ」「ランニングシェルジャケット」をそろえる。

〈登山関連ウエア/快適性高める機能で訴求/EFウエアの提案も〉

 ハイキングやトレッキング、トレイルランニング、クライミングなど、山の楽しみ方が多様化している。それぞれの用途に合わせた高機能性アイテムの投入が目立つ。

 アメアスポーツジャパン(東京都新宿区)は、アウトドアブランド「アークテリクス」24春夏で、多孔質なePE(延伸ポリエチレン)をポリウレタンと組み合わせたゴア社のメンブレンをジャケットに採用。耐久防水性、防風性、透湿性を高めつつ、軽さと薄さを追求した。リデザインで投入する「ベータジャケット」は、新メンブレンを採用した表生地を33デシテックスから88デシテックスに変更し、二酸化炭素排出削減をしたPFC(フッ素化合物)フリーのラミネートを施す。

 アウトドアウエア製造卸の双進(東京都中央区)は、登山向け独自ブランド「アクシーズクイン」24春夏で「換気するレイヤリング」をテーマに快適性を重視した商品群で訴求する。

 衣服内に熱や湿気をこもらせない超軽量撥水(はっすい)ジャケットは、ウインドシェルとしてベースレイヤーに重ねることで効果を発揮。アイテムごとに通気度を明示しており、同商品は毎秒1平方センチ当たり25・5立方センチの高い通気性を実現。蒸し暑い樹木林の中でも汗の蒸れを継続的に放出することで快適な肌触りが持続する。

 コロンビアスポーツウェアジャパン(東京都新宿区)は、アウトドアブランド「コロンビア」24春夏でハイク分野のラインアップ拡充を図る。

 エンジョイマウンテンライフジャケットは、防水、透湿、防風性を兼ね備えたハイエンド3レイヤージャケット。防水透湿機能「オムニテック」がウエア内を快適に保つ。長期にわたり防水、耐久性を維持する東レの素材「トレイン」を採用することで長年着続けられるサステイナブルアイテム。

 アウトドア用品製造販売のモンベル(大阪市西区)は24春夏で、電動ファン(EF)付きウエア「ファンブローベスト」を初投入。バックパックのハーネスに干渉しない左右非対称の位置に配したファンが特徴。

 背面サイドのファンの高さ位置をずらすことで、衣服内の冷却風がバックパックのハーネスで遮断されることなく前身頃と後身頃の両面に行き渡る設計。特許を申請中。

〈バウアーフリストッフェ「ラバラン」/日本のサステブランドが採用〉

 ドイツのウール加工業、バウアーフリストッフェが展開するウールの中わた素材「ラバラン」が、日本のサステイナブルファッションブランドに採用された。ラバランの機能性とエシカルな側面が評価を受けた。

 採用したブランドは「MSK」。ハイエンドダウンブランド「タトラス」創業者でタトラスインターナショナルの元CEO、坂尾正中氏が立ち上げたシーカークリエイティブスタジオがMSKを手掛ける。

 MSKがラバランを評価したのはウールが持つ保温性や吸湿性といった機能だ。日本では暖冬傾向が進む中、ダウンとは異なり暑くなりすぎることもなく、着用場所やシーンを問わず快適な着心地を実現できる。

 ラバランのエシカルでサステな点にも着目。欧州で「脱ダウン」の動きが加速していることから動物愛護の観点を意識した。さらに、ウール自体が生分解性も備えており環境負荷も少ない。MSKではメンズのアウターに使われている。

 ラバランの国内販売は原料商のアルゴ・インターナショナル(愛知県春日井市)が手掛ける。