MU25春夏/海外バイヤー大幅回復/トレーサビリティーが鍵
2024年02月07日 (水曜日)
【ミラノ=Imago Mundi代表・両角みのり】国際生地見本市「第38回ミラノ・ウニカ25春夏」(MU)が3日間の会期を終え1日(現地時間)閉幕した。地政学的緊張が高まる中でも海外からの来場が前回展比26%増の1903社(人数ではなく社数でカウント)と、にぎわった。
全体では5886社(うちイタリア国内3938社)でこちらも前回展を上回った。出展者数も前回展比7%増の508社が出展した。出展企業にとってコンタクト数と質の点で納得のいくものになったようだ。入場者では、日本(57%増)、韓国(15%増)、中国(15%増)、フランス(75%増)、ポーランド(30%増)、英国(26%増)、ドイツ(15%増)などが増加。北米の存在感も十分で、カナダは48%増となり、米国は増減未発表だが、151社と安定していた。
関係者らも今回展が大成功を収め、国際的に重要なイベントの地位を確立したとの評価で一致。今後のテーマ・方向性について、MUのバルベリス・カノニコ会長は「私たちは創造性と品質、そして持続可能性のある世界的なテキスタイルを代表する立場でありたいと考える。人工知能とデジタル化の進歩もあり、サプライチェーンが機械的で反復的な作業から解放され、労働者の人的貢献にこれまで以上に大きな価値を与えることができるようになる。そして、原材料から店頭に届くまでのライフサイクルを最終消費者に見えるようにするトレーサビリティーと、未来のファッションの基礎を構成する新しい人材の育成が不可欠だ」と語った。
〈注目されたJOB〉
日本コーナー「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」(JOB)では、長谷虎紡績グループが遠赤外線を放射して自然な暖かさを提供する「光電子」繊維、環境に配慮した次世代素材「BrewedProtein」繊維、深黒染めファブリックなどを軸に提案し、注目を集めた。
尾州の高級毛織物分野をけん引する中伝毛織(愛知県一宮市)は、MUに継続出展している企業の一つ。量産品から高付加価値品までを、生地だけでなく製品に仕上げるなど時代に沿った対応をしている。今回はウオッシャブルウールや環境配慮を重視した生地の提案に力を入れた。
北高(大阪市中央区)はハンガー展示のみのJOBプラスから、今回はJOBブースに出展。来場者は既存客と新規客が半々で、実際の発注もあり盛況だった。
ヤギは、西陣織の技術をベースに新たなクリエーションやテクノロジー、サステイナビリティーなど時代の感性を取り入れた生地ブランド「パラウェフト」を発表した。
V&Aジャパン(大阪市西区)は、生分解性の生地をメインに展示。CO2の削減、原料のバイオ化(石油不使用、自然素材を用いた染色など)、水の削減など、環境に負荷をかけない服作りをアピールした。
シルクテキスタイル・グローバル推進コンソーシアムとして出展した岡文織物(京都市)は、西陣織らしい金銀糸やカラフルなシルクを組み合わせた生地を提案。ワッフル生地など立体的な生地が目を引いた。
創作工房糸あそび(京都府与謝野町)は、前回出展時に来訪したバイヤーの再訪が多く発注も入り、手応えを十分に感じたと言う。
JOBは相対的に客入りが良く、輸出拡大に手応えを感じる出展者が多かった。世界から注目される伝統工芸、日本ならではの機能性商品など日本への関心は高いが、コストと納期がネックだとする出展者も多い。欧州では、原材料の調達から生産、最終消費者へ渡るまでのトレーサビリティーを求めるバイヤーやブランドが増えている。最終的にどうやって廃棄されるかも問われるようになるだろう。