特集 24春夏オフィス・サービスウエア(6)/素材メーカー編 機能素材を幅広く展開/東レ/帝人フロンティア/オンワードコーポレートデザイン
2024年01月31日 (水曜日)
オフィス、サービスウエアに求められる機能が多様化するのに伴って、素材の重要度はますます高まっている。大手合繊メーカーはその総合力を生かした製品ラインアップで、ユニフォームジャンルを超えた“最適解”な素材を提案する。
〈総合力生かして成長図る/東レ〉
東レの機能製品事業部は、2024年度(25年3月期)の重点施策として、飲食を中心とするサービスユニフォーム分野を強化する。訪日外国人客の増加などで拡大している需要を取り込み、成長につなげる。事業部の総合力を生かした提案を進め、24年度はサービスユニフォーム分野の売上高を前年度比20~30%増やす。
同分野の動向について「訪日外国人客が増加し、飲食を中心に需要が拡大している」と捉え、今後も現在の傾向が続くとみている。一方で事業部における同分野での今年度の販売は計画に届かない水準で推移しており、来年度以降は飲食を中心にサービスユニフォーム分野を強化する方針だ。
「着用感や快適性という衣料品の原点に回帰」したモノ作りを行い、拡販を図る。適度なストレッチ性とストレッチバック性を持つ「ライトフィックス」や軽量素材、ニット素材(丸編み)などに加え、事業部が持っている素材資源をフルに活用することで着用感や快適性を高めていく。
例えば、事業部では、ワークウエアやメディカル、スクールをはじめとする幅広い分野に素材を供給しているが、垣根を超えて多様な素材を用いる。パターン設計などによる着用感や快適性の向上にも目を向け、「グループの縫製機能を使った組み立ても検討」するなど、総合力の発揮を狙う。
オフィスウエア分野は順調な動きを見せている。感染症拡大による働き方の変化などから、織物を使った従来型事務服の需要は縮小基調にあるが、ニットを軸としたおもてなしウエア(接客服)という概念での提案が奏功した。今年度の販売は計画を上回る水準で推移している。
来年度もリサイクルやバイオ由来素材を使った高感性・高品位のニットによるおもてなしウエアを展開する。ハイエンドゾーンの需要を掘り起こし、10%増の売り上げ増を計画する。
〈高付加価値品に重点/帝人フロンティア〉
帝人フロンティアはオフィス&サービスユニフォーム向けテキスタイル販売で、これまで以上に高付加価値品の提案に重点を置く。同社でユニフォーム向けテキスタイル販売を担う衣料素材本部テキスタイル第二部はスポーツ向け機能素材の販売も担当していることから、スポーツ向け素材の技術を応用した機能素材の開発・提案にも力を入れる。
オフィス&サービスユニフォームに関して同社は、全体としては市場縮小傾向だが、サービスユニフォームを中心に企業別注が増加傾向にあるとみている。このため特徴のある素材で企業別注を中心とした分野に積極提案することで販売拡大を進める。
オフィスユニフォーム向けには梳毛調ポリエステル長繊維織物「トリクシオン」を重点提案する。物性の異なるポリマーをサイド・バイ・サイド構造で紡糸したポリエステル長繊維を使用することでウールのような捲縮(けんしゅく)性を可能にした。光沢を抑えたナチュラルな色調に加え、ストレッチ性もあることから、快適な着心地を実現する。
一方、サービスユニフォーム向けでは汗ジミ防止機能ポリエステル長繊維編み地「デュアルファイン」が注目素材。撥水(はっすい)機能糸「カラット」を特殊な2層構造編みとすることで肌側が吸水拡散層、外側が撥水層となる。汗を素早く吸収・拡散・放出することで汗染みが目立たず、蒸れ感も抑える。元々、スポーツ素材として開発された技術をユニフォーム素材にも導入した。
〈オンワードコーポレートデザイン/アップサイクルで多様な提案〉
オンワードコーポレートデザインは、「一人ひとりの『はたらく、まなぶ、つかう』をエシカルに」というサステイナビリティー方針を掲げる。昨年は使用済み制服や飛行機のシートカバーなどを活用したアップサイクルに取り組んだ。
東横インの使用済み制服をオリジナル時計にアップサイクルする取り組みはワークスタジオ(東京都新宿区)と協業。同ホテルが2022年12月にフロントスタッフの制服をリニューアルした際、制服製作を担当したオンワードコーポレートデザインに、サステの観点から旧制服を役立てられないかと相談したことがきっかけ。
時計は、旧制服の繊維を90%以上使用したパネコを文字盤に使用。パンツやキュロットの黒系の布片と、女性ジャケットのピンクやイエローの布片が混ざり合う。ボードの色合いや模様が一つ一つ異なり、同じものが二つとない直径40㌢のオリジナル品となった。古くなれば文字盤を再び粉砕し、成型することで再度のリサイクルも可能。昨秋から同ホテルのロビー、フロント、朝食会場、ラウンジなどに順次設置されている。
このほか、ANAホールディングスと共に、廃棄対象となった飛行機のシートカバーをルームシューズに生まれ変わらせる取り組みを継続している。今年度は「B737―500」と「B747―400」の2柄を加えて販売しており、総販売数は約1400個に達していると言う。