どうなる 2024 ~首脳の声から 今年を占う~(8)アパレル

2024年01月26日 (金曜日)

楽観視せず攻勢へ

 大手アパレル企業では、ファッション消費が上向いても「マーケットコンディションを厳しめに見ている。まったく楽観はしていない」(ワールドの鈴木信輝社長)という認識で一致している。

 一部の富裕層(30~40代のニューリッチ層、インバウンド客など)を除き、財布のひもは固くなっている状況で「複数購入していた顧客が購入点数を減らすだろう」(イトキンの前田和久社長)との観測もある。

 増税や物価高など消費者の生活圧迫感を緩和するような政府の追加施策がなく、企業の賃金アップも継続できなければ「中間層や地方の消費動向に影響が及ぶ」(バロックジャパンリミテッドの村井博之社長)と言う。

 ポイントになるのが商品価値の向上だ。素材やデザイン、機能性、ブランドイメージのアップといった複合的な訴求が必要で、その結果として価格転嫁も進む。秋冬コートで価格転嫁が進んだ三陽商会の大江伸治社長は「昨年から既存ブランドで地道な努力を続けた」と話す。

 特に、国内産地から素材を調達する企業が増えている。ジャケットやコート、ワンピースで上質素材を使用した販促も主流になりつつある。原材料や人件費の高騰を読みながらの生産になるが、大手アパレルは新型コロナウイルス禍でこれらをコントロールしてきた実績がある。仕入れの抑制と在庫の圧縮を継続しながら生産へ慎重にアクセルを踏む。

 攻めに向けて施策を進めるワールドの鈴木社長は「OMO(オンラインとオフラインの融合)施策では、相互送客が大切になる」と話す。顧客の利便性に重点を置く方針だ。

 オンワードホールディングスの保元道宣社長は「百貨店に限らず、全国の商業施設がグローバル集客型の施設と地域密着型の施設に大別されてきた」と話す。今年は自社電子商取引(EC)と並行して、実店舗の出店を強化。「地域密着型の百貨店、ショッピングセンターにも積極的に出店する」とした。

 楽観視をせず、攻勢へ転じるのが大手アパレルのスタンスになる。実店舗の出店が増え、新ブランドの開発など新たな動きも出てきそうだ。(おわり)