蘇州デュポン買収で合意/台湾の遠東紡織、上海と合わせ重合年35万トンに
2002年04月25日 (木曜日)
台湾の合繊大手、遠東紡織はこのほど、中国のポリエステル重合製糸合弁、蘇州杜邦聚脂(江蘇省)を買収することで米デュポンなどと合意した。2月から繊維事業を分社するなど構造改善を進めるデュポンはポリエステルから撤退の方向で売却先を探しており、すでに上海に重合から織布・染色までの一貫工場を持ち、さらに大陸での事業拡大を目指す遠東紡と思惑が一致した。
蘇州杜邦聚脂は資本金5500万ドルで96年に操業を始め、重合能力は年10万トン。約3万トンを長繊維、約7万トンをチップで販売していた。出資比率はデュポン51%、三菱商事グループ22・6%、蘇州化学繊維廠18・9%、国際金融公社7・5%だったが、遠東紡80%、デュポン・三菱商事各10%にし、経営権はデュポンから遠東紡に移る。
遠東紡は台湾島内に長・短繊維合わせ年産60万トンの設備を持つポリエステル大手。大陸でも上海遠紡を持ち、チップ、長繊維、織物を生産しており、昨年重合能力を13万トンから25万トンに増設したばかり。上海と蘇州を合わせた重合能力35万トンは国有の儀征化繊(江蘇省)に次ぎ2位となる。
デュポンは海外のポリエステル繊維事業を相次いでジョイントベンチャーに移管、経営権をパートナーにゆだねており、蘇州杜邦聚脂だけに経営権が残っていた。日本メーカーにも売却を持ち掛けたが、価格面で折り合わなかった。
中国の01年ポリエステル繊維生産は前年比23%増の633万トン。日欧米やアジア諸国が軒並み減産の中で世界シェアを33%まで上げた。需要の伸びを上回る増設増産で供給過剰に陥っているが、ミル消費拡大が続く唯一の巨大市場だけに、海外メーカーの進出、拡大意欲は衰えていない。
台湾勢では遠東紡以外に、東帝士グループが福建省アモイの重合製糸工場にPTA(高純度テレフタル酸)を併設。浙江省杭州に仮撚り工場を持つ新光合繊は重合からの一貫体制に拡充する。
韓国メーカーも、高合が山東省青島に重合からの一貫工場を稼働させており、暁星が浙江省に産業用長繊維、HUVISが四川省に短繊維の工場建設を計画している。
日本では東レが南通に重合製糸工場を持ち、現状の重合年10万トンを中期的に倍増設する方向。帝人も既存工場を買収し長繊維生産拠点を確保する構想を持っている。