技術の眼/YKK/フレックスジャパン/丹後の織物・機械金属振興センター/山本化学工業/ドリームベッド/帝人フロンティア

2024年01月19日 (金曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/マグネット式のファスナー〉

 YKKのファスナー「ビスロン・マグネットタイプ」は、左右の開具にマグネットが埋め込まれているため、開具同士を近付けるだけで閉じる。手元を見ない操作も可能となり、スポーツシーンにとどまらずキッズウエアやユニバーサルファッションにも用途を広げている。

 従来のファスナーは、左右の開具を係合(組み合わせる)する動作が必要で、高齢者や手が不自由な人にとって開閉作業が負担となるケースも生んでいた。ビスロン・マグネットタイプは、磁石の力によって片手での開閉も可能にするため、ファスナーの使用を敬遠しがちな人たちにとっても優しい製品だ。

 同製品は多様なシーンで活用できる発展性が評価され、2020年度の「グッドデザイン・ベスト100」を受賞している。

〈フレックスジャパン/タートルネックになるシャツ〉

 フレックスジャパン(長野県千曲市)はこのほど、シャツとタートルネックを組み合わせた新商品を発売した。高い襟で首を包むシャツ「ラップネックカラー」と、袖口をシャツの形状にしたセーター「大人タートル」の2種類。重ね着などの工夫で冬場の暖房使用を控える「ウオームビズ」が推奨される中、きちんと感を備えた仕事着として訴求する。

 ラップネックカラーは、首のボタンを閉じると襟が首回りを覆う構造でタートルネックのように着られる。伸縮性のある素材と柔らかな芯地を使っているため、シャツでありながら「着用時の快適さはタートルネックセーターのまま」(同社)と言う。首のボタンを開けると、一般的なシャツのように襟を折ることができる。体感温度に応じて、使い分けられる。

 価格は素材により異なる。ウール100%は1万6500円で、大丸東京店(千代田区)と同札幌店(札幌市)の紳士服売り場で取り扱う。

 秋冬向けスムース素材を用いた商品は4290円、通年向け天竺素材は3190円で、フレックスジャパンの直営店「プラトウ」(千曲市)のほかイズミヤ、ゆめタウンの一部店舗など全国のスーパーで販売。

〈丹後の織物・機械金属振興センター/発電する織物開発〉

 丹後織物産地にある京都府の製織技術の研究・支援機関、織物・機械金属振興センター(京都府京丹後市)が照明などの光で発電する織物を開発した。これから民間事業者と組んで事業化する。昨夏にこの布を開発し現在、プログラミング、音響、展示物の演出などを手掛ける企業にこの生地を使った新たな取り組みができないか働き掛けている。

 生地の開発者で同センター技術支援課の徳本幸紘主任研究員は「丹後で作った生地で新たなビジネスを生み出し、産地を活気づけたい」と話す。

 関西の繊維産業の活性化を目指すグループ「せんば適塾」が丹後織物産地で開いた産地見学会に合わせ、発電する織物を披露した。

 発電する織物は丹後産地で織られた絹織物がベースとなっており、1平方㍍ほどの範囲の経糸に沿うように発電糸14本が縫い付けられ、光が当たると発電する仕組み。使用する発電糸は、小径の球状太陽光発電池メーカー、スフェラーパワー(京都市)の商材を使う。

 同センターはこの織物から生まれる電力で音響のボリュームをコントロールするシステムを自作した。

〈山本化学工業/光で色が変わるゴム素材〉

 山本化学工業(大阪市生野区)はこのほど、地上や水中で光の当たり方によってグラデーション的に色が変化する高機能ゴム素材「オーロラ」を開発した。保温性、柔軟性、防水性なども生かしウエットスーツ、水着、アパレル、シューズ、バッグなどの用途に売り込んでいく。

 昨年11月28~30日にドイツ・ミュンヘンで開かれた「イスポ」に出展したところ、新素材選考会で世界中の400を超えるエントリーの中から総合1位となる“オーバーオールベストプロダクト”を受賞した。

 オーロラの最大の特徴は光の角度によって色がブルーやピンクに見えること。水中ではより激しく色が変わるほか、表面に水滴が付くだけでも色が違って見える。

 柔軟性に優れているほか、特殊親水性加工により水中での水の抵抗が低減され、同素材を使用した水着だとより速く泳げるという効果がある。耐摩耗性、防水性、速乾性、耐塩素性なども特徴。

 既に11月中旬から海外での販売をスタートさせており、アパレルメーカーからの問い合わせもあると言う。

〈ドリームベッド/マットレス診断システム開発〉

 ドリームベッドは、オーダーメードマットレスの診断システムを開発し、今月22日から展開する。診断に基づいてユーザーに最適なスプリング配置や詰め物を選んだオーダーマットレスを提案する。NTTDXパートナーが開発を支援した。

 システム開発では、ドリームベッドが収集した体形・プロフィルなどのデータとさまざまな種類のマットレスの官能評価の結果を用いて、ユーザーにフィットしたマットレスの配置や詰め物を算出するアルゴリズムを開発。同アルゴリズムを用いて接客時に使用する「オーダーメイドマットレス診断システム」を開発した。

 店舗では、ユーザーの年齢や身長などのプロフィルをヒアリングして同システムに入力。新規開発した装置を用いて顧客の体重、立った状態の姿勢を測定する。取得データを基に独自アルゴニズムによってマットレス内部のスプリング配列とマットレスの詰め物について最適なパラメーターを算出し、ユーザーにフィットするマットレスを提案。フィッティングマットレスを使って微調整し、最終仕様を決定する。

〈帝人フロンティア/ポリエステルとナイロンの融合〉

 帝人フロンティアは、単糸レベルでポリエステル長繊維とナイロン長繊維を混繊した特殊複合織・編み物「ミクセルNP」を開発した。25春夏スポーツ・アウトドア向けから販売を開始し、インナーやファッション分野にも幅広く提案する。

 ポリエステルとナイロンの複合素材は従来、交織・交編によるものか糸加工段階で混繊した原糸を使うものが一般的だった。しかし、通常のフィラメント単位での複合では質感や機能面での融合は難しかった。これに対して同社は紡糸工程でポリエステルとナイロンを混合することで単糸単位で二つの繊維が均一に混在する特殊異形断面マルチフィラメント糸を開発し、これを最適な条件で織編構造体とすることでミクセルNPの開発に成功した。

 ミクセルNPは吸水速乾性や撥水(はっすい)性はポリエステルと同等の機能性を発現させながら、ナイロン由来の耐摩耗性や発色性を併せ持つ。また、ポリエステルとナイロンを染め分けることでシャンブレー調の見た目となり、単色で染めても両繊維の染着差から深みのある色調になるなど優れた外観を実現できる。原糸は緩やかなV字断面でかさ高性やスパン調の風合いも併せ持つ。