ポリウレタン弾性糸と環境配慮/再生、生分解、バイオ原料化が加速/マスバランス方式へ注目高まる

2024年01月15日 (月曜日)

 世界的に繊維製品のサステイナビリティーが強く求められ環境配慮型素材の需要が一段と高まっている。そうした中、焦点の一つとなっているのがポリウレタン弾性糸の環境負荷。ただ、ここに来てリサイクル実現や生分解性付与、バイオマス由来原料化など課題を克服しようとする動きが加速する。

(宇治光洋)

 スポーツウエアだけでなく一般衣料でもストレッチ素材が広く普及したことでポリウレタン弾性糸は衣料品にとって不可欠な素材となっている。一方、ポリエステルやナイロンなど他の合成繊維と比べてリサイクル技術やバイオマス由来原料化、生分解性の付与といった環境配慮の面で実用化や普及が遅れており、場合によっては繊維製品リサイクルの妨げになるといった見方さえある。

 こうした中、原糸メーカーも環境配慮の取り組みを急ぐ。「ロイカ」ブランドを展開する旭化成は、製造工程で発生する端材などを原料に再利用する「ロイカEF」と生分解性を付与した「ロイカV550」をいち早く事業化した。ロイカEFは日本とタイ、台湾で生産し、年間300㌧、日本で生産するロイカV550も年間500㌧規模となり、さらなる増産と拡販を進める。

 ザ・ライクラ・カンパニーの「ライクラ」も環境配慮の動きを強める。東レとの合弁で日本でのライクラ製造販売を担う東レ・オペロンテックス(OPT)は現在、“繊維to繊維”の水平リサイクルを推進するための取り組み「OPTグリーンプロジェクト」を推進し、製造工程で発生する端材の再利用を進めた。

 さらに繊維製品のポストコンシューマ型リサイクルの実現を目指し、滋賀事業場(大津市)にポリウレタン弾性糸のリサイクル試験装置の導入を進めている。使用済み繊維製品からポリウレタンを分離・抽出し、再利用するもので、既に要素技術は確立した。今後は試験設備を活用し、リサイクル糸の実用化に向けた技術確立を目指す。

 バイオマス由来原料化も大きなテーマ。ザ・ライクラ・カンパニーはドイツのQore社(米国のカーギルとドイツのHELM社の合弁)と連携し、Qoreが生産するバイオマス由来の基礎原料を採用する取り組みを進めている。OPTもこれに参画し、市場ニーズや需要家の要望に合わせながら、バイオマス原料ライクラの販売を進める。

 環境配慮型原料の利用で注目なのが、原材料が混合される際にその比率を最終製品に割り当てるマスバランス方式の採用だ。旭化成はドイツの総合化学大手、BASFと協力してマスバランス方式によるバイオマス原料と再生可能エネルギーを導入した低カーボンフィットプリント(CFP)型のロイカを実用化した。CFP約50%削減を可能にした。

 一方、ポリウレタン弾性糸を利用するテキスタイルメーカー側でも革新技術の開発が進む。帝人フロンティアは使用済み繊維製品からポリウレタン弾性糸を取り除く異素材除去技術を開発した。

 こうした動きがさらに加速することで、ポリウレタン弾性糸の使用と環境配慮の両立の実現が期待できる。