ごえんぼう

2024年01月15日 (月曜日)

 先日、久しぶりに奈良の興福寺へ行き、阿修羅像をじっくりと眺めた。凛々しい顔を見つめながら、ふと、あることに気付いた▼阿修羅像は、仏法の守護神である八部衆という8体ある仏像の一つ。上半身の一部のみ残る五部浄像以外、7体は胴体もほぼ現存する。他の仏像が鎧で武装している姿に対し、阿修羅像だけは条帛という布をまとい、いかにも普段着のようだ▼そもそも阿修羅は帝釈天と戦う悪神のイメージが強く、他寺の像はもっと鬼のような形相をしている。近くにいた学芸員にその理由を尋ねると、釈迦から赦す心を持つように説法され、改心した時の姿を表しているという説があり、だから鎧を付けず表情も穏やかなのだそう▼今年に入ってもロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ地区攻撃など、いまだに戦争のやむ気配がない。阿修羅像のまなざしの先に、いつか争いのない世界は訪れるのだろうか。