素材メーカー首脳 景気回復に期待感
2024年01月09日 (火曜日)
4日、4年ぶりに大阪市内で開かれた繊維5団体が主催する「繊維団体新年名刺交換会」では多くの素材メーカーの首脳が集まった。1日に発生した能登半島地震の影響を懸念しつつも、2024年の見通しについて緩やかに景気回復の傾向にある世界経済を期待する声が多く聞かれた。
ロシアによるウクライナ侵攻や中東など国際情勢の悪化を背景にしたエネルギーコストや、中国経済の動向などが懸念材料となっているが、欧米での需要回復を期待する声は多い。各社の首脳は「24年も世界経済は引き続き緩やかに回復に向かう」(東洋紡の竹内郁夫社長)、「新型コロナウイルス禍からの回復によって全体的には繊維需要も回復する」(東レの三木憲一郎専務執行役員)といった見方を示す。
一方で「衣料繊維は23年まで1年半にわたって需要堅調が続いているため、これがどこまで続くかが焦点」(帝人フロンティアの平田恭成社長)との指摘もある。賃金の上昇機運とともに可処分所得も上昇に転じる兆しが見える中、「市場が認める価値をどう提供するかがますます問われる」(クラボウの藤田晴哉社長)との見方も。素材の価値や品質、サステイナビリティーなど取引先と訴求しながら、一緒に付加価値を高める「循環を作っていく」(同)ことも今年のポイントになりそうだ。
特に環境配慮、サステは企業の成長に必要不可欠な要素となり、その面で「新しいものを作り、付加価値をより高める」(大和紡績の有地邦彦社長)姿勢がより強まっていく可能性がある。並行して企業価値の向上も課題であり、ブランド戦略プロジェクトなどを含め「新しいことに対し前進している実感がある」(シキボウの尻家正博社長)として、24年はさまざまな成果を発現していく年にもなる。
また、能登半島地震を受け「消費マインドが冷え込むようなことにならないか心配している」(帝人フロンティアの平田社長)といった声も聞かれた。「これまで以上にリスクマネジメントが重要になっている」(東洋紡の竹内社長)、「グループ、海外を含めBCP(非常事態時の事業計画)を作っておく必要がある」(クラボウの藤田社長)として、リスクを分散する必要性も改めて認識。自社だけでなく「他社とのアライアンスも考えておかなくてはいけない」(同)といった指摘もあり、発生する確率が高いといわれる南海トラフ地震への備えを見直す動きも加速しそうだ。